前年度の研究によってRasd1タンパク発現がプロラクチン産生細胞の増殖を抑制することが明らかとなった。Rasd1遺伝子発現がエストロジェンの増殖抑制作用発現時に促進していることから、Rasd1がエストロジェンの増殖抑制作用を仲介している可能性が示唆される。今年度は、エストロジェンによるRasdI発現促進を抑制することによってエストロジェンの増殖抑制作用が阻止されるか否かを調べた。 Rasd1遺伝子発現を抑制するために、RNA干渉に基づいたsmall interfering RNA (siRNA)によるknockdown法を採用した。siRNA導入には、前年度のRasd1過剰発現実験と同様に、adenovirus vectorであるAd-shRasd1を、またnegative controlとしてAd-shControlを用いた。Ad-shRasd1をプロラクチン産生細胞に感染させると2及び4 MOIによってそれぞれ34%および52%の抑制がRasd1 mRNA発現に見られたことから、knockdown効率は十分であることが確認された。培養プロラクチン産生細胞にinsulin-like growth factor-1存在下にestradiolを投与すると、Ad-shControl感染群では74%の増殖率の抑制が見られたのに対し、Ad-shRasd1感染群では55%の増殖率の抑制がみられた。この結果はエストロジェンによる増殖抑制がRasd1のknockdownによって一部阻止されたことを示唆する。
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