研究課題/領域番号 |
24590298
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
森田 啓之 岐阜大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80145044)
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キーワード | 前庭-血圧反射 / 前庭系の可塑性 / 宇宙飛行 / 微小重力 / 過重力 / 血圧調節 / 前庭電気刺激 |
研究概要 |
宇宙飛行士を被験者とした研究:HoustonのJohnson Space Centerにおいて,国際宇宙ステーション(ISS)滞在前後(滞在2ヶ月前,帰還1日後,2週間後,2ヶ月後)にHead-up tile (HUT) 実験を実施し,HUT時の血圧調節における前庭-血圧反射の関与を調べた。26年3月31日の時点で,2名の宇宙飛行士に関しては全てのデータセットを取得した。他の2名に関しては滞在前のデータを取得した。この2名については26年度中に滞在後のデータを取得予定である。全データセット取得完了した2名については,ISS滞在前には前庭-血圧反射が働いてHUT時の血圧が維持されていた。しかし,帰還1日後と2週間後には前庭-血圧反射が全く働かなくなっていた。前庭-血圧反射の機能は,帰還後2カ月で,元のレベルにまで回復した。前庭-血圧反射機能の低下およびその回復過程は,宇宙飛行士の〝フラツキ"の自覚とその回復過程とよく一致していた。 ラットを用いた研究:異なる重力環境下で生活すると引き起こされる前庭機能の低下が,外部から前庭系を電気刺激することにより予防できるかどうかを調べた。ラットを2週間3 gの過重力環境で飼育する前後で,前庭-血圧反射試験,ロータロッド試験を行い,前庭系を介する血圧調節と運動制御を評価した。過重力負荷により,前庭-血圧反射が低下しとロータロッド上の歩行時間も減少した。これらの機能低下は,過重力環境下で飼育中に,前庭系を電気刺激することにより有意に回復した。この実験結果は,微弱な電流で間欠的に前庭系を刺激することにより,前庭系の機能低下が予防できる可能性を示すものである。 マウスを用いた研究:27年度にISS搭載予定で開発中のマウス飼育装置および1 g 負荷短腕遠心装置を岐阜大学に設置し,回転によるコリオリ力の影響を調べた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
宇宙飛行士の実験時間は厳密に管理され,また多くの実験申し込みがあるため,宇宙飛行士の同意を得るために激しい競争がある。その中で,24,25年度で2名の滞在前後のデータセット取得が完了した。他の2名については,滞在前のデータが取得でき,26年度に滞在後のデータを取得できる予定である。さらに,新たに2名の宇宙飛行士が我々の実験に参加することに同意した。これらの宇宙飛行士については,26~27年度にかけて実験する予定である。従って,宇宙飛行士を被験者とした研究は,若干の遅れがあるものの予定した被験者数を確保できる。 ラットを用いた研究では,前庭系を外部から微弱な電流で間欠的に前庭系を刺激することにより,前庭系の機能低下が予防できる可能性が示された。今までにない新たな予防法として,ヒトへの応用実験を行っている。また,新たにマウス研究を立ち上げ,27年度にマウスをISSに長期滞在させる実験の予備地上実験を行っている。従って,動物実験についてもほぼ予定通り順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
26年度中にn=4を達成できる。予定被験者数n=6のためには残り2名であるが,すでにこの2名についてはInformed Concentも終わっており,26年度中にISS滞在前のデータ取得予定である(帰還後のデータは27年度にずれ込む)。 ラットを用いた研究で効果が確かめられた前庭電気刺激をヒトに適応するための条件設定を行ない,countermeasureとしての前庭電気刺激を提案する準備をする。また,27年度打ち上げ予定のマウス実験に関する準備を進める。
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