研究課題/領域番号 |
24590300
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
松崎 健太郎 島根大学, 医学部, 助教 (90457185)
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研究分担者 |
紫藤 治 島根大学, 医学部, 教授 (40175386)
片倉 賢紀 島根大学, 医学部, 助教 (40383179)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 暑熱馴化 / 視床下部 / 神経新生 |
研究概要 |
【背景】これまでに我々は、暑熱暴露がラット視床下部において神経前駆細胞の分裂を促進し、その細胞の一部が成熟神経細胞に分化することを報告している。さらに細胞分裂阻害剤Ara-Cを脳室内に投与したラットの耐暑熱性が有意に減弱することを見出しており、これは暑熱馴化の形成に神経新生が関与することを強く示唆する。しかし、これらの結果はAra-Cが中枢神経機能に悪影響を与えた結果に過ぎない可能性も考えられる。そこで、Ara-C脳室内投与がラット視床下部の神経機能にどのような影響をもたらすのかを解析した。 【方法】Wistarラットをペントバルビタール(50 mg/kg)で麻酔し、腹腔内にテレメトリー送信機を挿入した。ラット背側皮下にAra-C (2% in 生理食塩水)を充填した浸透圧ポンプを留置し、側脳室にカニュレーションした。なお、生理食塩水を投与したラットをVehicle投与群とした。2週間の回復期間の後、ラットを24℃の暑熱環境に暴露した。暑熱暴露開始後、ラット腹腔内にBromodeoxyuridine(BrdU; 50 mg/kg/day)を5日間連続投与し、合計40日間飼育した。Ara-C投与後にラットの耐暑熱性および温度選択性等を解析した。脳組織を摘出し、免疫組織学解析およびWestern blot解析を行った。 【結果と考察】Ara-C長期投与はラットの腹腔内温とその日内変動、行動量、摂食量、耐暑熱性、温度選択性に有意な影響を与えなかった。また、Ara-C長期投与はBrdU陽性細胞の発現をほぼ完全に阻害したが、視床下部組織の形態や神経細胞マーカー(NeuN)、アストロサイトマーカー(GFAP)、神経活性マーカー(c-Fos)などの発現に影響を及ぼさなかった。以上の結果より、Ara-C長期投与による暑熱馴化形成阻害は細胞分裂阻害に依存している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでに我々は暑熱暴露によるラット視床下部の神経新生を細胞分裂阻害剤Ara-Cで阻害すると耐暑熱性が有意に減弱することを見出している。これは暑熱馴化の形成に神経新生が関与することを強く示唆する。しかし、これらはAra-Cが中枢神経機能に悪影響を与えた結果に過ぎないとの指摘がある。そこで従来の予定を変更し、Ara-C脳内長期投与がラット視床下部の神経機能にどのような影響をもたらすのかを解析した。
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今後の研究の推進方策 |
前述したとおり、視床下部における神経新生が暑熱馴化形成関与することを証明するために、Ara-C長期投与の中枢神経機能への影響をさらに精査する必要がある。今後、Ara-Cを長期投与したラットを用いてオープンフィールド解析法を用いた行動学試験を行う。また、可能であれば情動形成や空間認知機能に及ぼすAra-Cの影響を解析する。これら行動学的解析に異常がみられる場合には組織学・生化学的な解析を行う。その後、従来から予定されていた通り、視床下部で新生した神経細胞が視床下部ネットワークに組み込まれているかどうかを免疫電子顕微鏡を用いて組織学的に解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
Ara-Cを脳室内に長期投与するために、浸透圧ポンプ(Alzet model 2006)を購入すると同時にテレメトリーバッテリーの交換を依頼する。また、平成24年度の研究として計画されていた以下の実験(①~⑦)を行う。Ara-C投与ラットの①尾部血流量をレーザードップラー血流計で、②血圧・心拍数および腹腔内温をテレメトリー法で、③全体液量をアンチピリン希釈法で、細胞外液量をマンニトール標識法で、④代謝量の指標として酸素消費量を代謝ケージで、⑤唾液分泌量をサクソン法で、唾液中のアミラーゼやムチンなどのタンパク質含有量変化をELISA法でそれぞれ測定するための試薬および消耗品を購入する。さらに、⑦視床下部で新生した神経細胞が視床下部ネットワークに組み込まれているかどうかを免疫電子顕微鏡を用いて組織学的に解析する。 上記に加えて、平成25年度の研究計画として予定されている通り、暑熱馴化したラットの視床下部における新生ニューロンの活性を電気生理学的に測定することを目的として、新生神経細胞を標識するためのGFP結合レトロウィルスを購入する。なお、神経前駆細胞の標識に用いるGFP結合レトロウィルスは自作が困難なため外部発注(組換えレトロウィルス作製受託サービス, タカラバイオ)する。
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