研究課題/領域番号 |
24590302
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
堀尾 修平 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (80145010)
|
研究分担者 |
上山 敬司 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (50264875)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 摂食調節 / ヒスタミン受容体 / イムノトキシン / 視床下部 / 室傍核 / Cre recombinase |
研究概要 |
摂食調節に中心的な働きをする視床下部において、摂食を抑制するニューロンを新たに見出した。このニューロンは、視床下部室傍核に存在し、ヒスタミンH1受容体(H1R)を発現しているが、それ以外の性質は未だ全く不明な新規なニューロンである。本研究では、様々な手法を用いて、このニューロンの性質を明らかにすることを目指している。本年度はまず、当該ニューロン(H1Rニューロン)を特異的に死滅させることが可能な遺伝子改変マウスを用い、ニューロン死滅の詳細な実験条件を検討し、その手法を確立した。そして、視床下部室傍核のH1Rニューロンは、吻側と尾側に存在するが、摂食調節には室傍核の吻側に存在するH1Rニューロンが重要であることを明らかにした。第2に、H1Rニューロンに特異的にCre recombinase(Cre)を発現する遺伝子改変マウスの作製をおこなった。このマウスはノックインの手法を用いて作製した。サザンブロットおよびPCR法により、目的の遺伝子改変マウスが得られたことを確認した。しかし、Creの発現を免疫抗体法により検出を試みたが、検出できなかった。これは、Creの発現量が少ないためであると考え、次にYFP(yellow fluorescent protein)発現マウスと交配することでCre特異的にYFPを発現したマウスを作製し、Creの特異的発現をYFPの発現により検出しようと試みた。その結果、室傍核に特異的なYFPの発現を、免疫抗体法、およびYFPの蛍光観察により検出できた。今後、この遺伝子改変マウスを用いて、Cre特異的に種々のタンパクを発現させ、H1Rニューロンの性質を明らかにしていく予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.視床下部室傍核のH1Rニューロンの生理的意義を明らかにするため、そのニューロン死滅のための条件を詳細に検討した結果、実験条件を確定できた。 2.視床下部室傍核のH1Rニューロンは、吻側と尾側に分布が分かれるが、そのうち吻側に存在するH1Rニューロンが摂食調節に関与することを明らかにし、ターゲットをさらに絞りこむことに成功した。 3.PVHにおける他の摂食関連ニューロンとの関係を調べるため、組織化学的研究に必要なISHプローブをすべて作製し研究を開始している。このうち、CRHニューロン、MC4Rニューロンとの関係については一部結果を得ている。 4.H1R特異的Cre recombinase発現マウスの作製が完成した。YFP発現マウスとの交配により、YFPがH1Rニューロン特異的に発現しており、パッチクランプ実験を始めとして、種々の実験に取りかかる段階に到達した。 以上の様に、ほぼ順調に研究が進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
1.摂食行動の測定:H1Rニューロンを死滅させる実験条件が確立したので、様々な状況下での摂食行動へのH1Rニューロンの関与を調べることが可能になり、さらに研究を進めていく。 2.組織化学的解析:ISHプローブが完成しているのでそれを用いて、視床下部室傍核のH1Rニューロンと摂食関連ニューロンとの関係を調べる。 3.パッチクランプ法:H1R特異的Creマウスが完成し、さらにH1R特異的YFP発現マウスも完成した。このマウスの脳切片を作製し、H1RニューロンをYFP蛍光で特定することでパッチクランプ法を適用することが可能になり、本ニューロンに発現する各種の受容体タイプを明らかにする。 4.投射ニューロンの検索:Cre発現ニューロン特異的に、順行性物質(WGA)、逆行性物質(CTB)を発現させるウイルスベクターを作製する。今後このウイルスを用いて、それらの物質をH1Rニューロン特異的に発現させ、投射先ニューロンを特定する実験に進む予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
1.当該研究費(繰越分)が生じた状況 旅費使用について:共同研究者との連絡をメール等で行ったため、研究打合せ旅費を必要としなかった。また学会発表については研修旅行としたため、旅費を使用しなかった。 消耗品について:薬品の購入が予定よりも少額で済んだ。 これらの理由により、繰越分が生じた。 2.翌年度以降に請求する研究費と合わせた使用計画 動物の飼育数が増加するため、動物飼育管理費の増加が見込まれるので、これに充てる必要がある。また、薬品の使用を控えていた分、翌年度で使用するので薬品代の増加が見込まれ、この増加分に充当する予定である。
|