研究課題/領域番号 |
24590302
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
堀尾 修平 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (80145010)
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研究分担者 |
上山 敬司 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (50264875)
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キーワード | 摂食調節 / 視床下部 / ヒスタミン受容体 / イムノトキシン / 室傍核 / Cre recombinase |
研究概要 |
摂食調節に中心的な働きをする視床下部において、摂食を抑制するニューロンを新たに見出した。このニューロンは、視床下部室傍核(PVH)に存在し、ヒスタミンH1受容体(H1R)を発現しているが、それ以外の性質は未だ全く明らかでない。本研究では、様々な手法を用いてこのニューロンの性質を明らかにすることを目指している。本年度はまず、PVHに存在する他の摂食関連ニューロンとの関連を調べた。その結果、H1Rニューロンは、CRHニューロンおよびOXT/AVPニューロンとは、一部分で重なるが完全には一致しないこと、またTRHニューロンとは全く重なりがないことから、これらとは別のニューロンであることが判明した。次に、H1Rニューロン特異的にCre recombinase(Cre)を発現させることで、任意のタンパク質を特異的に発現させることが可能な系、すなわち、H1R遺伝子特異的Cre発現遺伝子改変マウスの作製を行った。ノックインの手法を用いて作製し、サザンブロット法およびPCR法により、目的の遺伝子改変マウスが得られたことを確認した。異なるES細胞コロニー由来の3系統のマウスを作製したが、いずれも性質は同じであった。得られたマウスはCreの発現量が少なかったため、YFP(yellow fluorescent protein)発現マウスと交配してできるCre特異的YFP発現マウスで、YFPをCreの換わりとして検出した。その結果、PVHにYFPの発現が見られたものの、H1Rの発現と一致しないことが判明した。またYFPの分布は視床下部のPVH, SCN, ARC, DMHにみられるのに対し、H1Rの分布はPVHとVMHに限られ、明らかな違いがあった。これらの結果から、得られたマウスは、H1Rニューロンに特異的にCreを発現していると考えることはできない。次年度、設計を変更し、再度作製を試みる予定である。一方、このマウスは視床下部の各部位に特異的にCreを発現していることから、有用なモデル動物となる可能性を持ち、今後検討に値する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1.PVHにおいて、H1Rニューロンと他の摂食関連ニューロンとの関係を調べ、CRHニューロン、OXT/AVPニューロン、TRHニューロンとは全く別のニューロンであることを明らかにできた。 2.H1R特異的Cre 発現マウスを作製した。しかし、このマウスは当初の予想と異なり、H1Rニューロンに特異的ではなく、別のタイプのニューロンに特異的にCreを発現していた。 3.以上のように、作製した遺伝子改変マウスが目的のものとは異なるため、原因を究明し再度作製を試みる必要がある。このため、現在の達成度は予定よりも遅れている。 4.ただ、今回作製された遺伝子改変マウスは、PVHを含めた視床下部の各部位に特異的にCreを発現しており、 摂食行動等、視床下部の関係する機能を今後調べる際に有力な手段を提供する。従って、今後の新しい展開を期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
1.H1Rニューロンの摂食行動への関与については、既に作製済みの遺伝子改変マウス(IM-H1Rマウス)を用いて実験を進めている。今後はH1Rニューロン死滅により摂食量、体重が増加する時の、酸素消費量、脂肪蓄積量などを測定し、エネルギー代謝経路への関与を明らかにする。 2.PVHにおいて、H1Rニューロンと他の摂食関連ニューロンとの関係をさらに詳しく調べる。H1Rニューロン死滅がCRHニューロン、OXT/AVPニューロン、TRHニューロンに影響を及ぼさないかどうかを中心に調べる。 3.H1R特異的Creマウスの作製を、設計を変更して再度試みる。 4.今回作製した遺伝子改変マウスは、当初の目的とは異なるものとなったが、視床下部の各部位に特異的にCreを発現するという点では非常に有力な実験手法を提供する。そこで、このマウスの性質について、今後調べていく。とくにCre発現ニューロンのみを特異的に活性化させる方法がすでに開発されているので、それを用いてこのニューロンがどんな機能に関係しているかを調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品については、ほぼ予定通り使用した。旅費使用のうち、学会発表については研修旅行とし、旅費を使用しなかった。このため、繰越分が生じた。 動物の飼育数が増加し、動物飼育管理費の増加が見込まれるので、繰越分はこれに充当する予定である。薬品等の消耗品費は予定通りの使用予定である。
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