研究課題
基盤研究(C)
従来の精神疾患の基礎研究では、モデル動物の作製を通じて病態発症の分子メカニズムの解明や治療薬の開発研究が行われてきた。しかし、充分な精神疾患の究明や予防には至っておらず、これまでとは異なる切り口で取り組む必要がある。本研究では、元来個体に備わる復元力あるいは回復力(レジリエンス)を生かし、如何にこれらを高めて精神疾患予防や治療につなげるか検討を始めた。平成24年度は、豊かな環境下での飼育の有用性を検証するために、依存性薬物(フェンサイクリジン;PCP)誘発行動障害モデルに対する作用を行動薬理学的及び生化学的に解析した。ICR系マウス(雄性3週齢)を4週間豊かな環境下で飼育し、その後2週間PCP(10 mg/kg)を投与し、行動実験を開始した。豊かな環境下で飼育したマウスは、PCP投与群で観察された社会性行動障害や認知機能障害を示さなかった。また、前頭前皮質において、豊かな環境下で飼育したマウスは、PCP投与群で観察されたヒストンH3陽性細胞中のアセチル化の有意な減少が認められなかった。このことから、豊かな環境下での飼育は、個体のレジリエンス力を高めることでPCPによる行動障害を抑制したと考えられる。また、そのメカニズムには脳内のヒストンアセチル化反応が関与している可能性が示唆された。次年度はこの機構の詳細について検討を進める。すなわち、健康な動物と精神疾患モデル動物とを神経科学的に比較することによって、レジリエンス機構を解明し、精神疾患予防や治療に対する新たな戦略を確立する。
1: 当初の計画以上に進展している
計画したよりも早く順調に条件設定が進み、研究全体がスピードアップできた。1年目の終盤に購入した機器の導入によって更なる多角的解析が可能となり、現在実践している。
既に有している行動薬理学的および神経科学的手法に加え、平成24年度に導入した回転かごおよび電気生理学手法を導入し解析を進める。
主として、自己防御・免疫機能のメカニズム解明を行うために上記導入機器を用いる。本年度以降は動物や試薬など消耗品類を中心に購入する予定である。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (2件)
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