研究課題
本研究では、元来個体に備わる復元力あるいは回復力(レジリエンス)を生かし、如何にこれらを高めて精神疾患予防や治療につなげられるかを目的として検討を開始した。初年(平成24年)度は、PCP誘発行動障害モデルに対する豊かな飼育環境の有用性を検証した。その結果、豊かな環境下で飼育したマウスは、PCP投与群で観察される社会性行動障害や認知機能障害発現を抑制した。また、その抑制作用には前頭前皮質のヒストンH3陽性細胞中のアセチル化が関与していることが分かった。2年目(平成25年度)は、豊かな飼育環境のうち最も接触時間の長い遊具を特定し、その接触による脳内の遺伝子発現変化を調べた。マウスは比較的偏りなく、遊具に触れていたが、最も滞在時間が長かったのは回転かごであった。そこで、C57BL/6J系雄性マウスを3週間にわたって回転かご付きのケージ内で飼育し、約1万種類の遺伝子の発現変化を大脳皮質、海馬および視床下部について調べた。その結果、回転かごのないケージで飼育したマウスと比べ、2倍以上に増加した遺伝子のうち、およそ40%は情報伝達系関連遺伝子であった。最終年(平成26年)度は、より変動レベルの高かった遺伝子についてタンパク発現やその機能性について確認し、それら分子が精神疾患予防因子として有効かどうか検討することによって、レジリエンス機構を解明し、精神疾患予防や治療に対する新たな戦略を確立したい。
2: おおむね順調に進展している
初年度は、実験条件設定が迅速にできたため、マウスの病態モデルにおける脳内変化を多角的に観察できた。2年目は、計画より時間がかかったものの、予定通り健康なマウスにおける自発活性後の脳内分子の変化を追跡できた。したがって、全体として計画通り順調に進展している。
平成25年度の実験結果を踏まえ、脳レジリエンス機能に促進的に関与していると推察される分子について、その分子機能を探る。本研究は3か年計画であり、本年が最終年度である。生体の持つレジリエンス機能の端緒を見出し、疾患予防につなげられる機能を見出したい。そして、臨床応用の橋渡しとなる、トランスレーショナルリサーチとなるよう意識して取り組むつもりである。
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