研究課題/領域番号 |
24590306
|
研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
鯉沼 聡 近畿大学, 医学部, 講師 (10340770)
|
研究分担者 |
長野 護 近畿大学, 医学部, 准教授 (80155960)
|
キーワード | 視交叉上核 / 概日リズム / 位相波 / Per2 / ルシフェラーゼ |
研究概要 |
哺乳類において安定かつ頑強な概日リズムを駆動する中枢は、視床下部の視交叉上核にある。我々は、視交叉上核が発振する概日リズムが単一の周期を持っているのに対して、視交叉上核内を構成するサブ領域においてはお互いの情報連絡を遮断することで異なる固有の周期を示すことを明らかにしてきた。また、視交叉上核においては内側から外側にかけて時計遺伝子の位相が連続的に伝播する位相波という現象が観察されるが、周期の短い領域が位相波の形成起点で、また周期の長い領域が位相波の終点となる領域と重なることから、位相波とサブ領域固有の周期との間には密接な関係が存在するのではないかという仮説のもとに研究を進めている。これまでに、情報伝達のシグナルとしてcAMPが中心的な役割を担っていることを明らかにし、このシグナルを恒常的に賦活化するような刺激を与えることでサブ領域固有の周期を顕在化させることに成功してきた。初年度は、主に物理的な情報遮断によっても短周期と長周期の領域を確認したが、本年度ではさらに化学的に情報伝達を抑制するような薬剤を与えることで、周期の領域性が現れるかについても検討した。しかし、この手法では、薬剤を加えることで測定を行う発光系の検出限界を下回ってしまうことから正確に周期を測定することは困難であった。現在も至適濃度を探索している段階である。また、並行して短周期領域を構成する細胞について、それらの形態学的な特徴を理解するために、樹脂包埋した視交叉上核標本を作製して視交叉上核を構成する細胞の形態や細胞密度に領域的な差が認められるかについて検討した。その結果、視交叉上核を構成する細胞の密度は全体で一様ではなく、内側部においてより高密度に集積していることが観察された。さらに細胞密度の高い領域と短周期を示す領域が重複していることから、周期の長短と細胞密度の間には何らかの関係が存在することが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題の目的は、視交叉上核における異なる周期を示すサブ領域についての解析を進めることで、視交叉上核内の小領域の性質を明らかにするとともに、各領域間の情報伝達によって構成される視交叉上核全体の概日リズムの発振機構を理解することである。最終的には異なる周期を持つ領域が組み合わさることによって、外部からの摂動や日長変化に対して堅牢なリズム発振を生じることが可能になるのかどうかについて統合的な理解を得ることを目指している。初年度および二年目の研究結果から、各領域を周囲から切り離し、非同期状態にした際に現れる固有の周期についての解析とさらにサブ領域の細胞集団の形態学的な解析を行ってきた。さらに各サブ領域の特徴を明確にするためにトランスクリプトーム解析を行うことで分子生物学的な特徴をも明らかにすることができると考えている。これらの解析を最終年度に行うことで、形態と分子の両側面から視交叉上核のもつ強固な発振機構の理解につながることを期待している。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、視交叉上核におけるサブ領域のトランスクリプトーム解析を行うことや、微小サブ領域に視交叉上核内シグナル分子を加える事で領域間の反応性の違いについて詳細に調べることを考えている。研究の大部分はインビトロでの実験系であり、位相反応曲線の作成は日常的に行っていることから、これまでの通り計画的に研究を遂行していく予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は1,022円の次年度使用額が生じたが、全体予算の99.8%は当初の計画通りに使用している。次年度使用額については予算内の執行を目指したためわずかに残額が生じたものである。 次年度使用額の1,022円については、26年度分の研究費と併せて、組織・細胞培養関係試薬、分子生物学関係試薬、組織化学関係試薬などの消耗品として使用予定である。
|