研究課題/領域番号 |
24590310
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
古川 賢一 弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (20165468)
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研究分担者 |
大島 吉輝 東北大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (00111302)
小野 睦 弘前大学, 医学部附属病院, 講師 (40400155)
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キーワード | 異所性骨化 / 脊柱靭帯骨化症 / 間葉系幹細胞 / 多分化能 / エピジェネティクス |
研究概要 |
1) 平成24年度は間葉系幹細胞の脊柱靭帯組織の中での局在場所(ニッチ)の証明を終えた。 平成25年度は、それを更に発展させて、骨化患者組織における間葉系幹細胞の局在の変化を免疫組織化学的に解析した。その結果、正常組織では血管の周囲に存在する周皮細胞(ペリサイト)に間葉系幹細胞のマーカーが集約されていたのに対して、骨化患者では、靭帯実質部、そして骨化部位の周辺である骨化前線部に多数の間葉系幹細胞が存在した。さらにその骨化前線部に存在する間葉系幹細胞は、軟骨細胞のマーカーを合わせて発現していた。このことは、我々が主張してきた、”異所性骨化も内軟骨性骨化(軟骨を経て骨化に至る)の過程を経て起こる”と言う説を指示するものといえる。 2) 患者靭帯組織由来の間葉系幹細胞をセルソーターで精製し、その細胞を用いて、多分化能を検討したところ、脂肪細胞化、軟骨細胞化、増殖能等には、非骨化組織由来のものとの間に差は見出されなかったが、骨化能のみ、患者由来の細胞で著明に高かった。従って、間葉系幹細胞から靭帯組織の細胞になるべきところを、間違って骨芽細胞様の細胞に分化したことが、発症の機序であることを強く示唆する結果を得た。 3) このin vitroでの証明にもとづき、次にin vivoでの易骨化能を明らかにするため、間葉系幹細胞にGFP遺伝子を導入して、生体内でのトレースを可能にし、免疫不全マスに移植して、それらの細胞が骨化組織を形成するかどうかを検討することにした。導入前の検討として、GFP遺伝子を導入した細胞の肝細胞機能に変化がないことを確認する必要があり、現在その検討を進めているところである。 4) 治療薬のシーズとなる物質(骨化・石灰化を抑制する薬物)の探索の探索を、平成25年度も引き続き行った。in vitroでの石灰化を抑制する天然物、及び合成誘導体を数種類見出した。現在細胞毒性の有無を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成25年度の当初の実験計画では、ヒト脊髄靭帯組織由来の間葉系幹細胞を、単離精製し、免疫不全マウスの皮下に移植して、骨化を観察する予定であった。しかし、単離精製は成功したが、細胞へのGFP遺伝子の導入に関して検討すべき課題(In vitroでの石灰化能、幹細胞としての多分化能、自己複製能に影響がないかどうか等)のクリアに時間を要して、実施に至っていないため。
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今後の研究の推進方策 |
疾患の発症原因として、ある程度の家族性があることから遺伝的変異の可能性が考えられる。その一方で、発症に至るには、機械的刺激等の環境要因も重要と考えられる。 そこで、第一の可能性については、網羅的ゲノム解析の手法で病因候補遺伝子の絞り込みをする必要があるが、所属する厚生労働省の研究班のグループにおける解析結果を下に、その遺伝子の骨化への関与を、間葉系幹細胞レベルで探る。具体的方法としては、当該遺伝子のsiRNAによるノックアウトあるいは過剰発現によって起こる、骨化能の変化を解析する。 第二の可能性については、エピジェネティクスな機構が推定される。骨化患者と非骨化患者の間での遺伝子発現プロファイリングの比較をマイクロアレイで行い、違いのあった遺伝子の発現調節が、DNAメチル化等のエピジェネティクスによるものかどうかを解析する。また、その機能と骨化との関係を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初予定していた旅費支出が、他の資金から支払われたため、当該助成金分が少なくなったため。 次年度の物品費に使用する。
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