研究課題
これまでに私たちは、ヒト成長ホルモン放出ホルモン受容体(GHRHR)が細胞内タンパク質PICK1と相互作用して、受容体の細胞内情報伝達の効率や受容体の細胞内局在を制御することを見いだした。本年度は、GHRHRを発現するヒト前立腺ガンに由来するLNCaP細胞において、PICK1が細胞増殖に与える影響について検討を行った。ヒト前立腺がん由来細胞LNCaPにおいてGHRHRとPICK1の発現を確認した。PICK1の発現レベルは対照細胞の正常前立腺細胞PANT1Aに比して39倍という高値を示した。また、GHRHがLNCaPの細胞増殖をもたらすことは既に報告されている。しかし、GHRHRとPICK1の相互作用のLNCaPにおける機能、特に細胞増殖に与える影響については不明である。本年度、LNCaPにおけるGHRH刺激による細胞内情報伝達、特に細胞増殖に関連するリン酸化ERKシグナリング系について検討を行った。ウィルスベクターによるPICK1の遺伝子発現を亢進させると、リン酸化ERKの発現が若干減弱した。さらにこのとき細胞増殖能も低下した。この結果から、PICK1の発現レベルを調節することにより、LNCaP細胞の増殖を調節できると考え、RNAiによるPICK1発現抑制あるいはPICK1過剰発現系を構築し、それらの細胞の増殖能を比較した。その結果、RNAiによるPICK1の発現抑制をするとLNCaPの細胞増殖は135%と有意に亢進した。一方、PICK1過剰発現細胞では対照細胞に対して、有意では無いが細胞増殖低下傾向が観察された。これらの結果から、PICK1の遺伝子発現レベルを調節することで、LNCaP細胞の増殖そのものを制御することができることが可能となった。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (11件) (うち招待講演 1件)
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