研究課題/領域番号 |
24590313
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
並木 繁行 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90452193)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | グルタミン酸 / イメージング / シナプス |
研究概要 |
本年度は、脳スライス標本や動物個体のin vivoでの蛍光イメージングにおいて大きな問題となりうる脳組織に由来する自家蛍光や光散乱を回避するために長波長蛍光を有する蛍光性のグルタミン酸プローブの開発に取り組んだ。このために、申請者らが既に開発に成功し、グルコースやATPなどの高性能蛍光プローブの開発に応用しているハイスループットスクリーニング系を採用した。620nm以上の長波長の蛍光を発するローダミン系やシアニン系の赤色の蛍光を発する蛍光色素に交換し、長波長蛍光を発する構成のグルタミン酸プローブの開発を行った結果、赤色の蛍光プローブとしてCy3を標識した蛍光プローブを得ることができた。得られた長波長蛍光プローブについて、グルタミン酸との反応特性(グルタミン酸への親和性、最大蛍光変化率)を評価し、実際のイメージングに適用するための基礎的なデータの取得を完了した。また、この赤色プローブを海馬神経細胞の分散培養標本に適用し、実際にグルタミン酸イメージングを試みたところ、一回の活動電位でプレシナプスから放出されたグルタミン酸を単一シナプスレベルの解像度で得ることに成功したことより、脳スライス標本や動物個体標本での使用に耐えうることが示唆された。 開発した長波長蛍光グルタミン酸プローブを脳スライス標本内の神経細胞上にのみに局在化させるために神経細胞上で分子タグと分子タグの選択的リガンドとの選択的な結合を用いた方法論の構築を開始した。そのために、分子タグとしてHaloタグ、ロイシンジッパータグなどを、膜タンパク質としてPDGF受容体の膜貫通領域やGPIアンカードメインを用いた分子タグ付き膜タンパク質を神経細胞に特異的に発現させるためのレンチウイルス、シンドビスウイルス、アデノ随伴ウイルスの作製を完了した。 。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画通り、赤色蛍光のグルタミン酸プローブの開発が完了した。また、開発したプローブが培養神経細胞で機能することを確認することができた。グルタミン酸プローブを神経細胞に特異的に標識するための分子タグ含むキメラタンパク質を神経細胞特異的に発現させるウイルスベクターの作製が計画通りに完了した。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画どおり、開発したグルタミン酸プローブを脳スライス標本や動物個体の脳で用いるための技術の最適化を進める。さらに完成したイメージング技術を用いることで、大脳皮質内の神経回路での情報処理過程についてシナプスでのグルタミン酸放出様式に着目して理解を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
今後は脳スライス標本や動物個体を用いたイメージング実験が中心になるため、実験動物購入及び光学部品に研究費が当てられる予定である。また、成果発表を行うための旅費や論文投稿、掲載のための費用にも充当する。
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