研究課題/領域番号 |
24590315
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
横尾 宏毅 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 准教授 (30332894)
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研究分担者 |
服部 裕一 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 教授 (50156361)
高野 康雄 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所), 臨床研究所, 所長 (60142022)
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キーワード | NADPH oxidase / 敗血症 / 酸化/ニトロ化ストレス / 活性酸素 / ラジカルスカベンジャー / 細胞委縮変形像 / ルシゲニン / 高グルコース |
研究概要 |
盲腸穿孔敗血症マウスモデル脳組織のin vivo 系、高グルコース処置培養血管内皮細胞およびのin vivo 系を用いて、酸化ストレス増加に大きく関与しているNADPH oxidase (Nox) 活性およびその分子発現を介して生じる、細胞内シグナル変動や組織傷害の程度について、分子生物学的手法、各種染色法を用いた顕微鏡形態解析などにより検討した。 敗血症マウス脳組織においては、HE染色で大脳皮質および海馬の神経細胞において、多数の細胞委縮変形像、濃染色像を認めるとともに、IL-1β、TNF-α、IL-6等のサイトカインのmRNA量・蛋白質量の発現増加、酸化ストレスマーカーである8-OHdG量増加を認めた。さらに、ニトロチロシン抗体を用いた免疫組織染色では、脳血管周囲に陽性像を認め、ニトロ化ストレスも増加していること、脳血管透過性マーカーが増加したこと、さらには電子顕微鏡解析では、実際に脳血管内皮の傷害像も観察された。さらに、Nox 構成各サブユニット分子について、敗血症マウス脳組織におけるmRNA量・蛋白質量を検討すると、p47phox、p67phoxの両サブユニットについて、発現増加が生じていたことを明らかにするとともに、ルシゲニンを用いた化学発光測定によるNox酵素活性についても、増加を認めた。加えて、ラジカルスカベンジャー、エダラボンを処置した敗血症マウスにおいては、脳神経の変性細胞が減少するとともに、Nox酵素活性の減少等、酸化ストレスの指標が減ずることを明らかにしました。 一方、in vivo 実験系の高グルコース処置培養血管内皮細胞においても、Noxサブユニット遺伝子発現増加とNox酵素活性増加、抗酸化サプリメントによるそれらの抑制効果を認めたことから、高血糖時等の代謝異常による組織傷害モデルおいても、Nox活性が大きく関与していることが示唆される結果が得られました。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度に計画していたin vivo系での高グルコース処置の実験、および、グラム陰性菌細胞壁外膜の構成成分であり内毒素であるLipopolysaccharide (LPS)を処置した傷害モデルの系で、Nox活性が細胞傷害に関与していることが示唆されましたので、おおむね順調に推移していると考えます。
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今後の研究の推進方策 |
敗血症マウス脳組織傷害モデルにおいて、Nox遺伝子発現の誘導、産生増加、その後の酸化・ニトロ化ストレス増加によって、血管透過性亢進、脳神経細胞が変性することを明らかにできましたが、Nox遺伝子制御に関与すると考えられるNF-κB、AP-1などの転写調節因子などとの関連など、まだ多くの点が不明です。培養細胞の実験系も加えていくなど、Nox活性の制御を目標に、敗血症脳症病態に対する効果的な治療標的となりうる分子について、引き続き解析・探索していきたいと考えます。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究代表者分は、年度末に発注予定であった遺伝子導入試薬の購入を、実験進行に合わせて延期させたためです。 研究分担者分は、形態学的解析等の研究遂行のために直接経費を分配していましたが、解析は手元の試薬で遂行可能であったため、平成25年度分の予定していた経費を次年度に持ち越されました。 研究代表者分は、発注を予定していた遺伝子導入試薬の購入に使用します。 研究分担者分については、平成26年度助成金分の経費と合わせて、敗血症病態組織の変化および治療効果について、顕微鏡形態学的解析のために使用していただきます。
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