研究課題/領域番号 |
24590316
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
西宗 敦史 福井大学, 医学部, 助教 (40311310)
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研究分担者 |
村松 郁延 福井大学, 子どものこころの発達研究センター, 特命教授 (10111965)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 薬理学一般 |
研究概要 |
今年度は、CRELD1(Cysteine-Rich Epidermal growth factor - Like Domain 1)欠損アレルはホモ接合で致死となることから、ヘテロ接合体のマウスの表現系解析を行った。 薬理学的解析としてα1L受容体の定量実験およびムスカリン性アセチルコリン受容体の定量実験を行った。それぞれ、同腹の雄のヘテロ接合体および野生型の個体を1ペアとして同時に脳、心房、心室を含む全身の臓器から組織切片を作成し、組織切片結合法を用いて受容体の定量を行った。この結果、野生型と Creld1-/+のヘテロ接合体との間に受容体量および、生体内表現型α1Lの相対量に違いは見られなかった。従って、少なくともα1アドレナリン受容体およびムスカリン性アセチルコリン受容体については、Creld1のhaploinsufficiencyによって受容体の表現型が影響を受けることはないと考えられた。 心機能の解析としては今年度は心電図の計測を行った。心電図の計測からQRS延長の表現系を示す個体が約5%の個体に観察された。以上のデータよりこのマウスが先天性心房心室中核欠損のモデルとして利用できる可能性が強く示唆された。 ヘテロ接合体の交配によって得られた胎児の分析では胎生9.5日齢まで遡って遺伝子型を解析したが、現在までホモ接合体は得られておらず、この胎齢までに子宮内で死亡して吸収されている等の理由で検出できていない可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)CRELD1欠失アレルのヘテロ接合体の交配による胎児の形態解析は、ホールマウントin situハイブリダイゼーションを行っている段階である。多数の胎児のスクリーニングにも関わらず、ヘテロ接合体の交配によって野生型とヘテロ接合体の胎児しか得られておらず、ヘテロ接合体と野生型には現在までのところ顕著な形態的差異は見出されていないからである。現在胎生9.5日齢まで遡れているが、ホモ接合の胎児が見つからず、これより以前に死亡しているものと考えている。従って、今年度はホモ接合体の胎児の形態学的なデータを得ることはできなかった。 (2)CRELD1欠失アレルのヘテロ接合体の成体由来の器官を用いた受容体の表現型解析は予定通り順調に進んでいる。今年度はアルファ1アドレナリン受容体およびムスカリン性アセチルコリン受容体について実験を行い、Creld1のhaploinsufficiencyによる受容体表現型および受容体量への影響は無視できる程度であることが証明できた。 (3)循環器系の表現型解析は、初年度は血圧測定と心電図測定を予定していた。血圧測定は完了していない。心電図測定は当初本学の動物実験施設の供用機器を利用する予定であったが、周波数特性の問題がありマウスの心電計としては利用できなかった。従って、予定を変更して本研究費で小動物用ECG解析システムを購入し測定を行っている。興味深いことにヘテロ接合体の一部の個体で心電図に著明な異常を認めており、これが中隔欠損と関連しているかを示すことが今後の研究のハイライトの一つとなると考えている。 (4)残念ながらコンディショナルノックアウトアレルを持つ動物の作出についてはまだ成功していない。次年度も引き続いて挑戦する。
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今後の研究の推進方策 |
24年度の研究結果から大まかな研究の推進方策として、 (1)心表現型については、Creld1+/-動物が先天性心房心室中隔欠損のモデル動物として利用できるかどうか確立することを柱とする。つまり、25年度は引き続き心電図の計測と解析を行うとともに、心エコー(カラードップラーによる)検査、及び心音の聴診による生体での中核欠損表現型値の可視化、および欠損表現型の組織学的な証明データを得る方向で研究をすすめる。 (2)薬理学的な表現型については、Creld1+/-動物では受容体量及び生体内表現型への影響は明らかでなかったため、コンディショナルノックアウト動物の作成に力を入れることとし、欠損ホモの組織で受容体表現型解析を再度行うこととする。 (3)初年度試みた範囲では成功していないが、発生段階を遡り生存Creld1欠損ホモ接合胚を探索する。もし見つかれば予定通り形態解析とMEF(mouse embryonic fibroblast)の培養を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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