研究課題
sphingomyelinase(SMase)の細胞外灌流によってKir4.1チャネルやKir2.1チャネルを流れるカリウム電流は減少する。昨年度までの解析から、この現象はsphingomyelinからceramideを介して産生されるsphingosineがKirチャネルに相互作用することによると考えられた。また以前我々の研究グループは、Kir4.1がsphingomyelinリッチな脂質マイクロドメインに局在していることを報告している。本年度、Kir4.1とスフィンゴ脂質の相互作用が脂質マイクロドメインに依存するか電気生理学的手法を用いて解析した。Kir4.1を発現させたHEK細胞をコレステロールのキレート剤であるMbCDで処理すると、マイクロドメインが消失すると考えられている。この前処置を行ないSMaseを灌流したところ、SMaseによるKir4.1電流の抑制はほとんどみられなくなった。次に、MbCDを処理した細胞からインサイドアウトパッチを作成し細胞内側からKir4.1に直接外因的なsphingosineを投与したところ、Kir4.1電流は無処理群やコントロール群と同じ濃度依存性で阻害された。この結果から、MbCD前処置によってSMaseのKir4.1抑制効果がみられなくなったのはスフィンゴ脂質がコレステロールなど他の脂質を介してKirチャネルを阻害しているのではなく、Kir4.1-スフィンゴ脂質の相互作用がマイクロドメイン消失によって起こりにくくなったためであると考えられた。この考察は、Kir4.1チャネルの発現量によって阻害の程度が影響をうけるという昨年度の結果とも一致する。さらに同様のMbCDの効果はKir2.1でも観察した。これら実験によって、Kirチャネルを制御するスフィンゴ脂質シグナル伝達の空間的制御とその基盤に関する基礎的理解が出来た。
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