研究課題/領域番号 |
24590321
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
秀 和泉 広島大学, 医歯薬保健学研究院(医), 助教 (20253073)
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研究分担者 |
酒井 規雄 広島大学, 医歯薬保健学研究院(医), 教授 (70263407)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ミクログリア / Toll様受容体4 |
研究概要 |
高齢化社会を迎え、神経変性疾患、脳虚血疾患の対応が急務であるが、画期的方策は見つかっていない。ミクログリアは細胞外の環境に応答して傷害的にも保護的にも働き、神経疾患の増悪・改善に深く関わっている。しかし、それらの作用の発現機構はいまだ不明である。研究代表者は、Toll-like受容体4を刺激したミクログリアは傷害性因子を大量に産生し自ら細胞死を起すが、その中に一定の割合(約20%)で細胞死を免れ生存し続ける集団が存在することを見出した。この細胞集団は、ダイナミックに死細胞を貪食し傷害性因子の産生も低いことから、細胞保護的性質をもつミクログリア群である可能性が高い。 平成24年度は、LPS刺激により生存維持するミクログリアに発現亢進する遺伝子を調べ、著しい亢進を示す遺伝子群を見出した。特に顕著であったのは、P2Y受容体のP2Y2サブタイプ、TNF受容体タイプ2(TNFR2)、ミクログリア・マクロファージ生存因子であるGM-CSFであった。これらの変化は同じファミリーであるP2Y6,P2Y12,TNFR1,M-CSFには認められなかったことから、特異的なタンパク質発現誘導であり、生存ミクログリアの生存能獲得と保護的機能発現に重要な役割を果たすと考えられた。 また、タイムラプス観察により、LPS刺激により生存維持するミクログリアは、高い運動性を獲得し、死細胞に向かい遊走し活発に貪食すること、P2Y2受容体を遮断するスラミン存在下では、LPS刺激による死細胞への遊走は抑制されることなく、貪食が特異的に阻害される様子が確認された。この結果より、ミクログリアの死細胞貪食にP2Y2受容体が関与する可能性を初めて明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
LPS刺激したミクログリアのうち、細胞死を起さず長期にわたり生存維持する細胞において発現亢進する遺伝子群を発見した。これらの中には、ミクログリアの生存維持や保護機能発現に関わることが推測される重要な因子が含まれていた。さらに、これまでミクログリアでは発現や機能が不明であったP2Y2受容体の新しい役割(死細胞貪食による恒常性維持)も解明できた。従って、現在での計画の遂行はおおむね順調であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度以降は、LPS刺激により生存維持するミクログリアに特異的に発現する遺伝子群をさらに網羅的に調べる。ミクログリアの増殖に関与するVEGF,IL-3,神経細胞生存を維持するIGF-1,ミクログリアの保護的機能発現に関与するIL-4などに焦点を当て解析する。免疫染色、FACSにより、発現パターンを検討し、異なる機能を持つサブポピュレーションの存在を検討する。 発現変化するこれらの自己分泌因子の作用がリコンビナント蛋白により再現できるか検討する。特に劇的な変化を示すGM-CSFなどのタンパクを中心に、神経傷害的あるいは神経保護に重要な因子の発現誘導パターンを調べ、GM-CSF産生ミクログリアの生存維持、保護機能発現における機序を調べる。 LPS刺激で生存維持するミクログリアを分離し、神経細胞と共培養して、神経細胞死に対する保護効果を調べる。さらに、虚血モデル動物を用いて、保護的ミクログリアの移植が神経細胞死抑制に働くか検討していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
H24年度に行う計画であった遺伝子発現の網羅的解析をH25年度にも引き続き行う予定である。このためH24年度の研究費を繰越して使用する。
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