研究概要 |
芍薬甘草湯のH9c2細胞のK電流に対する作用を調べた。H9c2細胞は、ラット新生仔の心臓由来で、心筋にも骨格筋にも分化する細胞である。この細胞は、Kv2.1遺伝子を発現しており、IKur(ultra-rapidly activating delayed rectifier K current)型のK電流が記録できる。そこで、H9c2細胞を用いて、ホールセルクランプ法でIKurを記録しながら、芍薬甘草湯を0.3 mg/ml から10 mg/ml までの範囲で細胞外液に灌流した。すると、芍薬甘草湯はIKurを抑制し、そのIC50値は約1.3mg/mlで、Hill係数は1.2であった。芍薬は10mg/mlでIKurを69.6+-8.0%(n=3)に抑制した。甘草は、10mg/mlでIKurを21.5+-18.6%(n=3)に抑制した。甘草はこれまでの我々の実験結果から10μg/mlでIKurを50%抑制すると報告した。したがって、H9c2細胞のIKurに対する抑制作用は、甘草>芍薬甘草湯>芍薬であることが分かった。また、甘草の主成文であるグリチルリチン100μMはIKurを全く抑制しなかった。さらに、IKurのK電流の遺伝子Kv2.1がラット骨格筋に発現するかを、RT-PCR法で調べた。その結果、ラット骨格筋にKv2.1mRNAが、H9c2細胞と同様に発現していることを確かめた。これらの結果を、Fukushima Journal of Medical Sciences Vol.60,No.1,2014に発表した。(J-STAGE Advance Publication, March 27, 2014)
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