研究実績の概要 |
芍薬甘草湯は、こむらがえりの特効薬として古くから用いられてきた漢方薬である。Hidakaらは、「芍薬甘草湯がパクリタキセルによるマウスの末梢神経痛を軽減させる」(European J Pain 13,22-27,2009) を報告した。また、Okuboらは、神経因性疼痛にT型カルシウムチャネル Cav3.2)が関与することを示した(Br J Pharmacol 166,1738-43,2012)。すなわち彼らは、マウスの足底にNaHSを注入して知覚過敏と異痛を引き起こした後、T型カルシウムチャネル(Cav3.2)阻害薬、またはTRPA1チャネル阻害薬を投与すると、知覚過敏や異痛が抑制されると報告した。そこで、芍薬甘草湯の神経因性疼痛を抑制する機序に、T型カルシウムチャネル(Cav3.2)の抑制が関与するかを調べた。そのために、T型カルシウムチャネル(Cav3.2)を発現したHEK293細胞を入手した。その細胞を用いて、ホールセルクランプ法でT型カルシウムチャネル電流を測定しながら、芍薬甘草湯をタイロード液に溶かしたものを、細胞外液として還流した。細胞内液はセシウムアスパラギン酸を主成文とした。芍薬甘草湯10mg/mlは、T型カルシウム電流を完全に抑制した。芍薬甘草湯の濃度を1mg/ml, 3mg/ml, 10mg/mlとして、抑制の程度を調べたところ、芍薬甘草湯は、T型カルシウム電流を濃度依存性に抑制することがわかった。芍薬甘草湯のIC50値は1.3mg/ml で、ヒル係数は1.1であった。このことから、芍薬甘草湯の神経因性疼痛を抑制する機序に、T型カルシウムチャネル(Cav3.2)の抑制が関与していることが示唆された。
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