研究実績の概要 |
本年度は、昨年同様に正常マウス(WT)とナトリウム-グルコース共輸送機構1の遺伝子改変(SGLT1-KO)マウスを用いて大動脈球部を狭窄させた圧負荷心不全マウス(TACマウス)を作成し、TAC施行群と非施行群で心筋肥大や心筋繊維化に対するSGLT1の関与について検討を行なった。2,4,6週後に心臓超音波をおこない、TACを施行したSGLT1を発現しているWTマウスとSGLT1-KOマウスでは、後者で左室短縮率の低下が有意に抑制されていた。TAC施行6週後に測定した心臓/体重比は、WTマウスのTAC施行群と比較してSGLT1-KOマウスのTAC施行群で有意に抑制されていた。また、心室筋細胞径は、WTマウスのTAC施行群と比較してSGLT1-KOマウスのTAC施行群で有意に低値を示した。さらに、心室筋組織の繊維化についてもWTマウスのTAC施行群と比較してSGLT1-KOマウスのTAC施行群で有意に抑制されていた。新生児培養心筋にphenylephrineを投与した実験では、WTマウス心筋と比較してSGLT1-KOマウス心筋において有意な心筋肥大の抑制が認められた。最終年度の結果から、慢性的心臓圧負荷によって誘発させる心筋肥大、心筋繊維化の増大および心不全の発症にSGLT1の発現が関与している可能性が示唆された。 本研究を通して、慢性的心臓圧負荷による心不全では、アデノシン一リン酸-活性化プオロテインキナーゼ(AMPK)の活性化を介してSGLT1の発現が増加し、またSGLT1の遺伝子改変マウスを用いた検討では、慢性的心臓圧負荷によって誘発させる心筋肥大、心筋繊維化の増大および心不全の発症にSGLT1の発現が関与していることがわかった。以上の結果は、心不全誘発心室性不整脈発生に対するSGLT1の関与についての研究の進展に寄与する重要な知見である。
|