研究課題/領域番号 |
24590327
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
輿水 崇鏡 自治医科大学, 医学部, 准教授 (20392491)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | オピオイド受容体 / ヘテロマー受容体 / 発現組織分布 |
研究概要 |
申請者らは本研究課題、ならびにこれまでの研究において、オピオイド受容体と複合体を形成し得るGタンパク質共役型受容体を各種のスクリーニングを開発しつつ検索している。特に、オピオイドの鎮痛効果を増強する或は副作用を軽減する化合物について、最も強力な鎮痛効果を持つモルヒネが、mu-オピオイド受容体を介して起こす薬物耐性や依存性を軽減させるためのリガンドや複合体形成を起こし得る非ピオイド受容体の同定を目指している。 本年度は、発現細胞株を用いた実験においてMOR1受容体と非オピオイド受容体との相互作用を確認し、確認できた非オピオイド受容体に関し、生体内でも同一細胞に共発現し、直接相互作用する可能性があるかについてデータベース検索と、実際の脳内組織分布解析によって受容体共存の有無について検討した。非オピオイド受容体の脳内における発現分布について、まず公共データーベース(Allen brain atlas、Expression omnibus、GEO)より収集し、実際に免疫組織染色により実験的に確認した。特にMOR1受容体が発現する下行性痛覚抑制性経路や中脳、視床下部、側坐核などオピオイド耐性、依存性形成に関わる部分について詳しく解析を行った。さらに、MOR1受容体に対する抗体と非オピオイド抗体との2重染色を行なったところ、MOR1受容体と中脳において共発現するためヘテロマー受容体を形成し得る受容体を見出すことに成功した。 また、オピオイドリガンドの受容体に対する親和性を解析するために、放射線標識オピオイドリガンドと未標識オピオイド化合物、受容体発現細胞からの膜分画試料の3種類を用いた受容体結合実験を行なった。受容体を共発現させヘテロマー受容体の存在が考えられる場合、さらに非オピオイド受容体に対する未標識非オピオイド化合物を加えて起こるアロステリック効果を検出することに成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題全体では、ヘテロマー受容体が形成されることが知られるオピオイド受容体について新しい薬物を探索し、新規オピオイド受容体ヘテロマーを対象に麻薬鎮痛薬の効果増強、有害作用抑制に関わる化合物を同定することを目的とする。そこで本年度は、計画したごとく、ヘテロマーを形成し得る非オピオイド受容体について、オピオイド受容体と発現分布が重なり生体内でヘテロマー受容体が存在し得る可能性について検討し、両受容体が共発現することを細胞レベルで明らかにすることに成功した。また競合的受容体結合実験を実施し、モルヒネを含むオピオイドの受容体膜分画への親和性を変化させる非オピオイド化合物について探索を行なった。それにより、オピオイド受容体へテロマーのアロステリックなリガンド結合について重要な知見を得ることが出来、この結果を踏まえてさらに今後シグナル伝達機序の探索に進むことが可能になると考えられた。以上、本年度はほぼ予定した計画を実施できたと考える。
|
今後の研究の推進方策 |
1)受容体機能に与える影響の解析;MOR1刺激薬モルヒネと非オピオイド受容体に対するリガンド(刺激薬、拮抗薬、バイアスドリガンド)が共存する際の受容体機能を解析するため、まずGタンパク質依存性の情報伝達への影響を明らかにする。MOR1受容体はGiαタンパク質に共役するため、アデニレートサイクラーゼ(AC)の活性を阻害してcAMPの産生を抑制する。この効率がオピオイド受容体ヘテロマー発現細胞で変化するかについて、非オピオイドリガンド存在下またはMOR1受容体単独発現細胞と比較する。 2)βアレスチンに依存する細胞内情報伝達の解析;Gタンパク質非依存性、βアレスチン依存性細胞内シグナルの例として、MAPK、AKT、PI3K、ELKのリン酸化状態を解析する。この場合、MOR1受容体単独、非オピオイド受容体単独、または共発現した細胞を比較し、モルヒネと非オピオイドリガンドの共存によって、単独受容体が刺激された時よりも有意に増強または減弱するリン酸化が観察された場合に、ヘテロマー受容体が機能的である可能性がある。ただし、単に共発現した受容体同士が細胞内で情報伝達のクロストークを行なっている可能性もあるため評価は慎重に行う。この他にβアレスチン1または2タンパク質を過剰発現またはノックダウンさせた場合の影響も検討する。さらに、ヘテロマー受容体とβアレスチンの直接相互作用について、免疫沈降法や細胞内での局在を可視化し解析する。 以上により、見出したオピオイドへテロマーの細胞内シグナル伝達経路の特徴を明らかにする。
|
次年度の研究費の使用計画 |
該当無し
|