研究課題/領域番号 |
24590328
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研究機関 | 獨協医科大学 |
研究代表者 |
林 啓太朗 獨協医科大学, 医学部, 准教授 (10323106)
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研究分担者 |
JUTABHA Promsuk 獨協医科大学, 医学部, 助教 (90541748)
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キーワード | アミノ酸トランスポーター / LAT1 / T細胞 |
研究概要 |
LAT1は、これまで癌細胞特異的に発現し癌細胞の生存、増殖において重要な機能を担っていると考えられてきた必須アミノ酸トランスポーターであるが、本研究によりLAT1がヒトT細胞の活性化においても極めて重要であることが明らかとなった。T細胞は特異外来抗原を認識するとサイトカインの産生などを盛んに行い個体の免疫反応を促進する。研究代表者は、ヒト末梢血T細胞が抗原認識前にはLAT1をほとんど発現していない一方で、抗原認識により完全活性化されるとLAT1の発現を顕著に上昇させること、またそのメカニズムとしてT細胞機能促進因子NF-κB及びAP-1を介したLAT1の発現制御を明らかにした。さらに、LAT1特異的阻害薬によりサイトカイン産生などの活性化T細胞の機能が大幅に抑制され、そのメカニズムとしてLAT1機能阻害による転写抑制因子DDIT3の発現上昇、およびDDIT3によるT細胞活性化因子NF-kB及びNFATの機能阻害を明らかにした。以上の結果から、LAT1は活性化T細胞においても重要なアミノ酸トランスポーターとして機能しており、LAT1機能阻害が活性化T細胞における新規アミノ酸欠乏ストレス応答反応を誘起し免疫学的機能を抑制することが明らかとなった。これらの結果をThe Journal of Immunologyに報告した。また、LAT1阻害薬を新規免疫抑制薬として特許登録した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究の目的に記載されている、LAT1がT細胞における主要なアミノ酸トランスポーターであることの証明は概ね完了した。また、LAT1がT細胞の機能においても重要な役割を持つことも明らかにできた。さらに、マイクロアレイを用いた実験から、LAT1特異的阻害薬により、活性化T細胞が新規アミノ酸欠乏ストレス応答反応を誘起し免疫学的機能を抑制することもわかった。当初の計画では、次年度に研究成果を発表する予定であったが、データが早く得られたため、予定よりも早く当該年度に論文を発表することができ、計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
T細胞におけるLAT1の重要性についてはin vitroにおける実験で多くのことが証明できた。今後は、これまで得られた知見が、実際に生体においてどれくらい反映できるか検証する予定である。具体的には、アトピー性皮膚炎のモデルマウス、あるいは関節リウマチのモデルマウスに様々な濃度のLAT1特異的阻害薬を投与し、疾患を発症させたときの薬剤の治療効果を検討する予定である。 また、マイクロアレイを用いた実験により、LAT1特異的阻害薬によってDDIT3の発現が上昇することが明らかとなったが、DDIT3以外にも多くの遺伝子の発現変動が引き起こされることがわかっていることから、これらの遺伝子のT細胞における機能を調べる予定である。具体的には、候補遺伝子の強制発現ベクターやsiRNAをT細胞に導入し、発現を変動させた時にT細胞における機能変化をサイトカイン産生や細胞増殖などを指標にして調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品については、購入時に一品ごとに値段、品質を精査し、品質を維持しながらも極力価格の低いものを購入するように努めた結果、使用予定金額よりも低い金額の使用額となった。 次年度使用額については、免疫疾患モデル動物の実験におけるマウスの購入や実験消耗品の購入に当てる予定である。
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