研究課題/領域番号 |
24590329
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
坂本 謙司 北里大学, 薬学部, 講師 (80317065)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 薬理学 / 中枢神経 / 網膜 / 網膜色素変性症 / 緑内障 / 網膜変性 / 神経細胞死 |
研究概要 |
1. 各種網膜変性疾患モデル動物における各種金属微量元素の含量および網膜内分布の変化 遺伝的網膜色素変性症モデルマウスの1つであるC57BL/6J-Pde6anmf363/nmf363網膜に含まれる鉄イオン含量の測定を市販の比色法キットを用いて試みたが,検出限界以下のため,測定できなかった.今後は抗フェリチン抗体を用いた免疫沈降法を組み合わせることによって,網膜内鉄イオン含量の測定を試みる. 2. 網膜の微量金属元素含量を変化させた際に神経網膜におきる変化の解析 NMDA誘発網膜傷害モデルラット,ツニカマイシン誘発網膜傷害ラットおよび遺伝的網膜色素変性症モデルマウスの1つであるC57BL/6J-Pde6anmf363/nmf363に対する,鉄イオンキレート薬deferiprone投与の影響を検討した.NMDAと同時にdeferiproneを硝子体内に投与しても,NMDAにより誘発される視神経節細胞の傷害は軽減されなかった.しかし,ツニカマイシンと同時にdeferiproneを硝子体内に投与すると,ツニカマイシンにより誘発される視細胞の傷害が抑制された.加えて,C57BL/6J-Pde6anmf363/nmf363に対してdeferiproneを飲水に混和して投与すると,錐体細胞機能の低下が抑制された.従って,鉄イオンキレート薬は,ある種の網膜神経変性疾患,特に網膜色素変性症において認められる錐体細胞機能の低下に対して有効である可能性がある.今後は他の鉄キレート薬を用いて同様の検討を行うと共に,逆に硝子体内に鉄を負荷した際に網膜にどのような変化が起きるかについても検討していきたい. また,硝子体内に亜鉛を投与する実験を行ったところ,網膜に傷害が認められた.今後,この現象の機序についても検討していきたい.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,鉄キレート薬がいくつかの網膜傷害モデルにおいて神経保護作用を示すことができた.鉄キレート作用と神経保護作用との関係を明らかにするためには網膜内の鉄含量を測定する必要があるが,残念ながらこの点はまだ未解決である.しかし,抗フェリチン抗体による免疫沈降を組み合わせることで,解決可能なのではないかと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
鉄キレート薬がいくつかの網膜傷害モデルにおいて神経保護作用を示すことができたが,鉄キレート作用と神経保護作用との関係を明らかにするために,比色法キットと抗フェリチン抗体を用いた免疫沈降法を組み合わせることによって,網膜内鉄イオン含量の測定を試みる. 加えて,他の鉄キレート薬を用いて同様の検討を行うと共に,逆に硝子体内に鉄を負荷した際に網膜にどのような変化が起きるかについても検討する. また,硝子体内に亜鉛など,他の金属元素を投与する実験を行い,網膜神経細胞に与える影響を検討する.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は,本年度末に執行した消耗品費の支払が大学の事務処理の都合で翌年度に繰り越されたものである.
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