研究課題
本研究は人工アミノ酸を用いて2型リアノジン受容体(RyR2)のS4-S5リンカーを介する相互作用を同定し、チャネル活性制御と疾患変異による破綻の分子機構を明らかにすることを目的とした。平成25年度は人工アミノ酸を導入するためのアミノアシルtRNA合成酵素(aaRS)とtRNAを効率的に発現させるシステムを構築した。人工アミノ酸の導入にはaaRSおよびtRNAを大量に発現する必要があるが、オリジナルの発現ベクターの細胞への導入はリポフェクション法により行うため、導入効率および発現量が十分でなかった。そこで改変バキュロウィルス発現系を開発してこれを使用した。バキュロウィルスのエンベロープにVSV-Gを発現するような改変を行ったところ、哺乳類細胞に効率良く感染するウィルスが得られた。このウィルスベクターにaaRSおよびtRNAをコードする配列を挿入してウィルスを作製しHEK細胞に感染させた結果、両者を大量に発現することが確認された。光架橋可能な人工アミノ酸であるp-benzoyl-phenylalanine(pBpa)を導入するため、RyR2の当該アミノ酸のコドンをアンバーコドン(TAG)に改変してHEK細胞に安定発現した。pBpa添加培地でaaRSおよびtRNA発現バキュロウィルスを感染させたところ、当該アミノ酸がpBpaに置換したRyR2の発現が確認された。現在、この変異RyR2の性質を検討している。
3: やや遅れている
平成25年度の計画では人工アミノ酸を導入したRyR2を発現させ、S4-S5リンカーと相互作用する部位を同定することを行う予定であった。人工アミノ酸の導入効率が予想外に低かったことから、当初の計画とは異なり、バキュロウィルスを利用した発現システムの構築が必要となった。そのため、相互作用部位の同定には至らなかった。
平成26年度は25年度に計画していた人工アミノ酸導入RyR2を用いた相互作用部位の同定をはじめに行う。相互作用部位は光架橋により分子内結合したRyR2を精製後、トリプシン処理により限定分解して質量分析(MS/MS)する。光架橋処理を行わないものを対照にして、光架橋処理により生じたフラグメントを同定する。平成24年度に作製した疾患関連変異体についても同様な操作を行い、架橋部位の同定を行う。これらの結果から、相互作用部位に関する予測を行う予定である。
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