研究課題
基盤研究(C)
心筋型リアノジン受容体(RyR2)からの自発的Ca2+遊離を制御する薬物は不整脈治療薬となる可能性がある。現在RyR2のみを抑制する抗不整脈薬は存在しないが、いくつかの抗不整脈薬(βブロッカーのカルベジロール、Naチャネル阻害薬のフレカイニド等)がCa2+遊離に対する効果を併せ持ち、それが不整脈の抑制にも寄与することが示唆されている。しかし薬物本来の作用とRyR2抑制効果の各々の寄与の程度は明らかでない。本研究の目的は、これらの薬物の心筋細胞内Ca2+調節、活動電位、細胞間相互作用への作用を調べ、どのような様式のRyR2抑制が抗不整脈効果を持ち得るかを検討すると共に、新たな抗不整脈薬を探索することである。平成24年度は摘出心筋標本への候補薬の効果をライブイメージングにより調べると共に、RyR2を安定発現させたHEK293細胞を用いてRyR2に対する薬物の直接の作用を検討した。材料として自発的活動電位を頻発する拡張型心筋症(DCM)モデルの心室筋を用い、共焦点顕微鏡を用いた高速画像取得により細胞内Ca2+および活動電位をモニターした。基準のRyR2抑制薬かつNaチャネル阻害薬のテトラカインは自発活動を抑制したが、洗浄後には激しい一過性自発活動を引き起こした。一方、カルベジロール、フレカイニドはDCMモデル心筋の自発活動を有意に減少させたが、テトラカインと異なり、洗浄後の自発活動の一過性上昇作用はなかった。これらの薬剤の主たる作用は興奮性の抑制と考えられたが、RyR2からのCa2+遊離に対する作用はテトラカインとは異なっていた。RyR2発現HEK細胞にテトラカインを作用するとER Ca2+濃度は上昇したが、カルベジロールは、ER Ca2+レベルをを減少させRyR2からの自発的Ca2+遊離を抑制していた。この差異が抗不整脈作用の違いになると考えられた。機序について検討中である。
2: おおむね順調に進展している
心筋組織を用いた基礎的な薬物のスクリーニングを行うことができた。当初、今年度計画に入れていなかったが、RyR2に対する直接作用を検討するために、RyR2を安定発現するHEK293細胞系を樹立し、Ca2+インジケータ蛋白を用いて、細胞質とCa2+ストア内のCa2+レベルを定量的に測定する手法を確立した。
今後は、組織イメージングの精度を上げ、高精細の細胞間連絡について調べていく。また、HEK293細胞にCa2+遊離を起こしやすいとされる変異RyR2(カテコラミン誘発性心室頻拍(CPVT)変異)を発現させ、薬物の効果を定量的に検討し、RyR2に対する作用の詳細を検討する。薬剤の探索の範囲を広げる。
該当なし
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