研究課題
目的と計画心筋型リアノジン受容体(RyR2)からの自発的Ca2+遊離を制御する薬物は不整脈治療薬となる可能性がある。現在RyR2のみに作用する抗不整脈薬は見つかっていないが、いくつかの抗不整脈薬(カルベジロール、フレカイニド等)は本来の作用に加えRyR2への作用で不整脈抑制に寄与することが示唆されている。しかしそれらに対し異論もあり、薬物本来の作用とRyR2抑制効果の各々の寄与の程度は明らかでない。本研究の目的は、これらの薬物の作用の詳細(リアノジン受容体、その他の細胞内Ca2+調節系、受容体、活動電位等への作用)を調べ、どのようなRyR2抑制が抗不整脈効果を持ち得るかを検討し、新たな抗不整脈薬の可能性を探索することである。計画では摘出心筋標本への候補薬の作用をライブイメージングにより調べると共に、RyR2を安定発現させたHEK293細胞を用いRyR2に対する薬物の直接作用を明らかにする。RyR2からのCa2+遊離促進の機構は”Ca2+によるCa2+遊離”(CICR)機構と”ストアCa2+過負荷誘発性Ca2+遊離”(SOICR)機構が提唱されているので、候補薬物がそれらのパラメータにどのように働くか検討する。実施状況まず不整脈を頻発する拡張型心筋症モデルの心室筋の細胞内Ca2+および活動電位を共焦点顕微鏡によりモニターした。上述した既報告の薬物のいくつかはDCMモデル心筋の自発活動を有意に減少させた。次にRyR2発現HEK細胞を用いRyR2に対する薬物の直接作用を検討した。SOICRを検討するために、小胞体Ca2+インジケーターを用いて小胞体内Ca2+レベルを測定した。その結果、カルベジロールは小胞体 Ca2+レベルを減少させることが自発的Ca2+遊離の抑制に関わることが分かった。現在、CICRおよびSOICRのパラメータを種々の薬がどのように変化させるかを検討中である。
3: やや遅れている
不整脈モデル心筋組織および、RyR2を安定発現するHEK293細胞の小胞体Ca2+をモニターするというアッセイ系を確立することができた点は、かなり前進した点であり、今後の応用性も広いと思う。一方で候補薬物の探索では、RyR2に作用の強い抗不整脈薬の候補はまだあまり見いだせていない。
RyR2に作用の強い候補薬はまだ既報のもの以外見いだせていない。しかし、我々が構築した解析システム(HEK293細胞の小胞体Ca2+モニター系)を用い、RyR2の不整脈原性変異体の性質の検討はかなり進んだので、CICRの各パラメータと自発的Ca2+遊離の関係が分かってきた。今後も、薬物探索を続けるが、これに加え、RyR2変異体の性質についての検討結果を報告する。そして、自発的Ca2+遊離/不整脈を制御するCICRおよびSOICRのパラメータを導き出し、それを心筋組織で検証し、薬物の探索につなげることを考えている。
年度末3月に購入予定していた試薬の在庫が国内になく、納入が間に合わなかった。消耗品の購入に使用する。
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