研究実績の概要 |
本研究は、IRBITのリン酸化、特にN末領域に存在するSer/Thrに富む領域(STR)における多重リン酸化のパターンを介して、脳型NBCe1とIP3Rとを連関的統合的に調節しうること、それが中枢神経系のシナプス周囲を被覆するグリア細胞の突起領域で起きること、このIRBITによる脳型NBCe1(細胞内pH)とIP3R(細胞内Ca2+)との連関的統合的調節機構が、シナプス伝達における影響を明らかにしようとしたものである。 本研究では、1)IRBITの、脳型NBCe1との結合には、Ser68, 71, 74, 77の4つのリン酸化が必須であること、2)細胞が種々のストレスに曝された際には、IRBITはSTR内で更なるリン酸化を受け、IP3Rに対してより親和性が高くなりそうであること、をふまえて研究を進め、主に大きく2つのことを明らかにした。i) IRBITがNBCe1と結合し、活性化する際には、Ser68, 71, 74, 774つのリン酸化だけでは不十分であり、CK2による、Ser80, 84, 85, Thr 82のリン酸化も必須であること、ii) IP3Rと高親和性に結合する際のIRBITのhyperリン酸化フォームは、Ser62, 64, 66のリン酸化によること、iii) NBCe1 KOマウスの脳では、IRBITが上記hyperリン酸化フォームを取っていること、等である。 上記のことから、中枢神経系内で、IRBITが、NBCe1,の活性状態(おそらく、細胞内のpH環境)に応じてリン酸化状態を変化させ、それによってIP3Rに対する親和性を調節し、細胞内pH環境に応じた細胞内Ca2+動態調節をおこなっている可能性が示唆された。 本研究では、この調節機構が神経伝達・可塑性にどういう機能を果たしているかまでは、明らかに出来なかったので、今後これを明らかにしたい。
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