研究課題
基盤研究(C)
① 平成24年ではまずはキマーゼ阻害薬であるSuc-Val-Pro-Phep(OPh)2の徐放効果がPTFE人工血管移植後の血管内膜肥厚に対して有効か否かを検討した。方法として、ホソカワミクロンにキマーゼ阻害薬(2mmg)、そして、ホソカワミクロンにFITCをそれぞれ封入し、PTFE人工血管壁(直径:6mm;長さ:7cm)へ浸透させた。その後、ビーグル犬4頭の左右の頚動脈間にそれぞれ移植し、2ヶ月後にサンプルを採取した。採取されたPTFE人工血管を三等分し、カルノア固定後にパラフィンブロックを作製した。HE染色後の血管内膜肥厚度を比較検討したが、両群間で著明な差がなく、今後薬物封入術や人工血管へ薬物付着方法の改良が求められた。② これまでに、我々はPTFE人工血管移植後の管腔内血管内膜肥厚の形成には移植後の血管周囲からの線維芽細胞の管腔内への遊走が非常に重要であることを指摘してきた。そこで、今回はPTFE人工血管(直径:6mm;長さ:7cm)の周囲にフィルムを取り巻き、このような線維芽細胞の遊走に対する物理的な遮断作用が移植後の管腔内血管内膜肥厚形成へ抑制効果へつながるか否かを検討した。方法として、ビーグル犬4頭の左右の頚動脈と静脈間にそれぞれフィルムを取り巻いたPTFE人工血管と通常のものを移植し、その3ヵ月後に管腔内の血管内膜肥厚度を検討してみた。結果、フィルムを取り巻いたPTFE人工血管内の血管内膜肥厚度が対照群に比べて有意に少なく、これまでの我々の仮説が強く支持された。
2: おおむね順調に進展している
平成24年度の計画としては ペプチド性キマーゼ阻害薬(Suc-Val-Pro-Phep(OPh)2)とパクリタキセルの徐放効果を比較検討する計画であったが、キマーゼ阻害薬を用いた実験結果ではキマーゼ阻害薬の徐放効果が十分に得られなかったことから、パクリタキセルの徐放効果を検討することができなかった。研究業績の概要でも報告したように、キマーゼ徐放剤をPTFE人工血管壁に浸透はさせたが、その二ヶ月後の血管内膜肥厚度はFITC封入のホソカワミクロン群と有意な差がなかった。この結果はこれまでのキマーゼ阻害薬経口投与時の効果とは一致せず、キマーゼ阻害薬の徐放技術の改良、投与量の設定、その他のキャリアを用いた再検討が必要であると考えられた。
ホソカワミクロンを用いた実験において、人工血管移植後の2ヶ月をエンドポイントとして検討を行ったが、その時点でのFITCの蛍光および免疫染色による陽性染色像などが検出されなかったことより、浸透させたホソカワミクロンが移植後にPTFE人工血管壁から素早く血流によって流された可能性が考えられた。従って、今後の研究の進め方として、徐放剤のコーディング方法の改良やその他のキャリアを用いた検討が必要ではないかと考えている。研究業績の概要でも報告したが、フィルムをPTFE人工血管周囲に取り巻くだけでもその管腔内血管内膜肥厚が著明に抑制されたことより、今後諸薬物をフィルムの表面などに付着させ、その効果を確かめていく必要があると考えている。
平成24年ではキマーゼ阻害薬であるSuc-Val-Pro-Phep(OPh)2の徐放効果がPTFE人工血管移植後の血管内膜肥厚に対して有効でなかった。原因として、浸透させたホソカワミクロンが移植後にPTFE人工血管壁から素早く血流によって流されたことが考えられ、今後、徐放剤のコーディング方法の改良が求められた。そこで、今年度で特殊細工されたフィルムを用いてキマーゼ阻害薬や抗ガン剤などを塗布し、それをPTFE人工血管周囲に取り巻き、検討を加えていく予定である。実験1(イヌ:5頭)イヌの左右の動静脈間にPTFE人工血管移植術を施す。左:キマーゼ阻害薬+フィルム;右:フィルム単独 実験2(イヌ:5頭)イヌの左右の動静脈間にPTFE人工血管移植術を施す。左:パクリタキセル+フィルム;右:フィルム単独上記の二つ実験群において、PTFE人工血管は移植後二ヶ月で採取し、人工血管内の三ヶ所の内膜肥厚度および外膜側からの線維芽細胞の浸潤度合などを比較検討する。
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