研究課題
基盤研究(C)
近年、小胞体ストレスへの不適切な応答が、糖尿病、アルツハイマー病、パーキンソン病などの発症や病態進行に関わることが明らかにされている。小胞体ストレスのシグナルは、IRE1、PERKおよびATF6の3種類のセンサーで感知された後、細胞質・核へと伝達されていくが、そのうち、IRE1が活性化されるためには、小胞体ストレスに応答したセンサーの二量体化およびそれに伴う分子間自己リン酸化で、Ser724を含む複数の残基がリン酸化されることが必要である。今回、私達は、培養細胞における異所発現系により、小胞体に局在するセリンスレオニンホスファターゼであるPP2CεがIRE1のSer724を特異的に脱リン酸化すること、PP2Cεは小胞体上に存在するscaffoldタンパクであるVAP-Aを介してIRE1と結合することを見出した。しかしながら、PP2Cε遺伝子欠損マウスより樹立したMEF細胞を用いた実験では、PP2Cε遺伝子欠損によるIRE1のSer724のリン酸化の亢進は認められなかった。このことは、細胞内ではPP2Cεを含む複数のプロテインホスファターゼがIRE1の脱リン酸化に関与していることを示唆しており、脱リン酸化に関与するプロテインホスファターゼの同定が今後の研究の遂行に当たって非常に重要であることが考えられた。
3: やや遅れている
PP2Cε遺伝子欠損マウスより樹立したMEF細胞を用いた実験において、PP2Cε遺伝子欠損によるIRE1のSer724のリン酸化の亢進は認められなかったことから、PP2Cε以外のプロテインホスファターゼがIRE1の制御に関与することが分かり、IRE1は当初考えられていたよりも複雑な機構で制御されていることが示唆されたことから。
PP2Cε遺伝子欠損マウスより樹立したMEF細胞を用いた実験では、PP2Cε遺伝子欠損によるIRE1のSer724のリン酸化の亢進は認められなかったことから、細胞内ではPP2Cε以外の複数のプロテインホスファターゼがIRE1の脱リン酸化に関与していることを示唆された。この結果を踏まえ、次年度はIRE1の脱リン酸化に関与するプロテインホスファターゼの同定を試みる予定である。そのために、セリンスレオニン特異的なプロテインホスファターゼ(PP1、PP2A, カルシニューリン、PP2C、PP4、PP5、PP6およびPP7)に対するsiRNAによる発現のノックダウン によりIRE1の脱リン酸化に関与するプロテインホスファターゼの同定を試みる。
これまでの研究計画に加え、セリンスレオニン特異的なプロテインホスファターゼ(PP1、PP2A, カルシニューリン、PP2C、PP4、PP5、PP6およびPP7)の触媒サブユニットに対するsiRNAによる発現のノックダウンに必要な試薬の購入を追加する予定である。
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