研究課題/領域番号 |
24590340
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
小林 麻己人 筑波大学, 医学医療系, 講師 (50254941)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 小胞体ストレス / Nrf2システム / ゼブラフィッシュ |
研究概要 |
本研究は、小胞体ストレス応答におけるNrf2システムの生理的役割と、その活性化機構を明らかにすることを目的とする。Nrf2システムとは、酸化ストレス防御の中心を担うストレス応答型転写機構であり、研究代表者は、これまでにゼブラフィッシュを活用して研究を行い、Nrf2システムが、酸化ストレスだけでなく小胞体ストレスにも応答して発動することを、遺伝学的に発見した。 本年度は、小胞体ストレス発症時におけるNrf2システムの生理的役割の解明を目的に、小胞体ストレスを自然発症する突然変異系統it768とNrf2機能破壊系統fh318の二重変異系統を作製し、これを用いた表現型解析を行った。二重ヘテロ変異系統は、生存・生殖ともに可能であり、さらにit768ヘテロfh318ホモの変異系統も同様であった。一方、二重ヘテロ変異系統に関しては、単独のit768系統と同様、孵化後10日から二週間で致死となった。これらのことは、it768の致死性に対し、Nrf2の機能破壊が影響しないことを示す。小胞体ストレスの状況をBiP遺伝子発現などで解析したところ、it768単独ホモ変異幼魚よりも、二重ホモ変異系統の方が、強い小胞ストレスを発症していることがわかった。これらの結果は、Nrf2システムが小胞体ストレス抑制に何らかの機能を発揮しているものと推測させた。 小胞体ストレスに対して、Nrf2システムが応答することは知られていたが、抑制的に機能することは初めての観察であり、Nrf2システムの新しい生体機能を見出したと言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
小胞体ストレスを自然発症する系統とNrf2機能破壊系統の二重変異系統の作製と解析に成功したことと、Nrf2システムが小胞体ストレス抑制に機能していることを実証できたのは、期待通りである。一方、発現変動する遺伝子群の同定に関しては、小胞体ストレス関連の遺伝子以外は新たに見いだせなかった。これは、遺伝子変動が、in situハイブリダイゼーション法以外では明快に解析できず、困難であったためである。この点は、今後の課題となっている。
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今後の研究の推進方策 |
Nrf2機能の破壊は、it768ホモ変異幼魚の致死性には何も影響を与えなかったので、it768の死因は、小胞体ストレスとは関連性がないことが推測された。したがって、当初計画では、ホモ二重変異幼魚の致死性の解析を主軸にNrf2の生理機能の解明を行う予定であったが、次年度以降では、致死性以外の表現型を見つけ出し、ホモ二重変異幼魚か、it768ヘテロ変異Nrf2ホモ変異成魚で、解析することを試みる。さらに、小胞体ストレス抑制におけるNrf2システムの作用点解明とともに、本研究課題のもう一つの柱であるNrf2システムにおける小胞体ストレスセンサーの同定にも取り組む。作用点解明に関しては、困難さがあった新規発現変動遺伝子群の同定を切り口にはせず、既知小胞体ストレス関連遺伝子の解析を軸に行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、試薬類・プラスチック器具類などの消耗品費100万円、成果発表旅費などの旅費に10万円、研究補助員への謝金20万円、研究成果発表投稿料などに20万円、の使用を計画している。
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