Rabファミリータンパク質は小胞輸送の中心的な制御因子である。中でもRab35は、小胞輸送に加え、アクチン細胞骨格の制御や細胞膜成分の再構築などの多彩な機能を有することが明らかとなっている。これまでに、Rab35がNGF刺激によるPC12細胞の突起伸長に促進的に機能することやショウジョウバエRab35のGAPであるSkywalkerの変異によってシナプス伝達が亢進することが報告され、Rab35の神経発生や高次脳機能制御における生理的役割を理解することが重要だと考えられる。そこで本研究では、哺乳動物におけるRab35の生理的役割を理解するために、Rab35欠損マウスの作製を試みた。全身性にRab35を欠損したマウスは、胎生13.5日より前に死亡し、胎生致死となることが分かった。線虫RAB-35は生存に必須ではないことから、Rab35がマウス初期胚発生に特有の機能を有することが示唆された。今後、Rab35の欠損胚の表現型を詳細に解析し、Rab35がどのようにマウス初期胚発生を制御するかについて明らかにしていきたい。 Rab35欠損マウスが胎生致死となることから、神経系特異的にRab35を欠損するマウスの作製を試みた。神経系特異的Rab35欠損マウスは胎生致死とならずに成獣まで発育することから、高次脳機能に及ぼすRab35の役割について検討を進めている。また、初代神経細胞を用いた機能解析のための実験系の確立を行った。本研究中に、胎生期のマウス脳から初代神経細胞を調製し、レンチウイルスやエレクトロポレーションによるGFP-Rab35発現プラスミドの導入条件を確定した。今後、初代神経細胞の神経突起過程におけるRab35の局在観察を行っていく予定である。また、神経突起伸長に及ぼすRab35欠損の影響を検討していきたい。
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