研究課題/領域番号 |
24590342
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
伊藤 暢 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 講師 (50396917)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 再生医学 / 細胞・組織 / シグナル伝達 / 肝臓 / 組織幹細胞 |
研究概要 |
本研究課題では、種々のマウス肝障害モデルを用いて、肝再生に寄与する成体肝前駆細胞(オーバル細胞)の誘導・増殖・分化を制御する分子機構を解明すること[課題1]、および、肝前駆細胞と肝線維化や肝がん等の病態との関連の実態や機序を明らかにすること[課題2]、を目的としている。 平成24年度は、[課題1]については、肝前駆細胞の誘導に関わると想定される因子として新たに炎症性サイトカイン分子を見出した。この分子の発現は、種々の肝障害時に上昇し、しかも障害部位に局在していることが認められた。また、この分子を生体肝臓内で過剰発現させることで、肝前駆細胞を誘導可能であることも見出した。このとき、肝前駆細胞のニッチを構成すると想定されるThy1陽性細胞の顕著な増幅も認められたことから、このサイトカインは肝障害に対する初期応答シグナルとして、肝前駆細胞ニッチの制御に関与する可能性が強く示唆された。また、肝前駆細胞に対して作用する既知のシグナル経路のうち、Notchシグナルは増殖を、Wntシグナルは肝細胞への分化を、それぞれ促進する可能性が新たに示された。 同じく、[課題2]については、特にFGF7と肝線維化との関連に注目した解析を行った。マウス生体肝臓でFGF7を強制発現させることで肝前駆細胞の誘導・増殖を促進可能であることが既に明らかとなっているが、このとき、誘導された肝前駆細胞の周囲ではコラーゲン線維の集積が認められた。これにより、肝前駆細胞が自身の周辺微小環境を自律的に構築・制御している可能性が示唆された。一方で、肝臓全体では線維の有意な蓄積は認められなかったことから、将来的にFGF7の治療への応用を進める上では線維化誘導への副作用は回避できると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
[課題1]、[課題2]共に、「FGF7を中心としたシグナルネットワークによる細胞間相互作用」という視点に基づく、新たな分子機構・生理機能についての知見を得ることができ、今後さらに解析を進めることで、肝前駆細胞の制御機構や病態との関連の理解につながることが十分に期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究実施計画に加えて、平成24年度に肝前駆細胞制御に関わる新規因子として同定した炎症性サイトカイン分子についての機能解析にも特に重点を置き、推進する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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