研究概要 |
1 慢性低酸素に働く転写因子CREB, NFkBの作用機序 低酸素培養24時間以降で活性が上昇するCREB, NFkBの活性制御機構について解析を進めた。HeLa細胞やMB231細胞を用いた解析から、NFkBはその負の制御因子であるIkBの分解を介したcannonical pathwayにより、CREBはリン酸化されることにより、それぞれの活性が正に制御されていることが明らかになった。さらに、これらの分子の活性化に、急性期で働くHIFの活性が必要であるかを、HIFノックダウン細胞を用いて検討したところ、NFkB経路は正常に活性化されたが、CREB経路はその活性が顕著に抑制されることが明らかになった。 2 CREB, NFkBのがん転移における役割 CREB, NFkBのがん浸潤・転移における役割を、in vitro実験およびマウスへの移植実験を用いて検証した。乳がん細胞株MDA-MB-231のCREB、NF-kB、MMP1をそれぞれノックダウンしたstable lineを樹立した。これらの株を用いて、コラーゲンゲル上での細胞移動能をスクラッチアッセイを用いて検証したところ、CREB、NFkBノックダウン細胞は野生型の半分程度までその移動能が低下していた。この低下はMMP1ノックダウン細胞と同程度であった。さらに、これらの細胞株をヌードマウスに移植したところ、コントロール細胞と比べて顕著にがん転移能が抑制された。 3 RNA-seq解析による新規慢性期因子の同定 MDA-MB-231細胞の慢性期低酸素(48時間以降)で発現が増大してくる遺伝子の網羅的な同定を、次世代シークエンサーを用いたRNA-seq解析により試みた。Gene ontology解析より、膜受容体を介したシグナル経路に関与する遺伝子が主に増加することが判明した。また、発現量が顕著に増加する機能未知の遺伝子のクローニングを実施して、その機能解析を細胞内の転写制御に着目して進めている。
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