本研究はCanonical Wntシグナル伝達経路におけるIQGAP1を介したβ-cateninの核内移行の機構の解明を目的とする。昨年度までに、Canonical Wntシグナル伝達においてIQGAP1が細胞室内でIQGAP1/β-catenin/DVL2複合体を形成し、複合体としてβ-catenin を核内に移行させる機能を明らかにした。また、IQGAP1は核内移行因子であるImportin-β5やRanと結合し、これらの因子との共作用によりβ-cateninを核内に移行させることも明らかにした。 当該年度は上記のような昨年度までに解明したIQGAP1の作用機序がIQGAP1の異性体(IQGAP2、3)や他のImportin-βファミリー遺伝子でも保存されているかを調べた。 その結果、IQGAP2はDVLの全ての異性体に結合するが、IQGAP1とは逆に、Wntシグナル伝達に負の働きをすることが分かり、IQGAP2のノックダウンによりWntの標的遺伝子の発現量が増加することを明らかにした。IQGAP3に関してもDVLの全ての異性体と結合はするが、Wntシグナル伝達への顕著な影響は確認できなかった。 さらにIQGAP1の質量分析により、IQGAP1と結合するImportin-β7が同定され、Wntシグナル伝達における役割を精査中である。
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