研究課題/領域番号 |
24590347
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
水谷 哲也 福井大学, 医学部, 准教授 (90322734)
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キーワード | 転写因子 / 遺伝子発現 / SF-1 / SF-1複合体 / C/EBPβ / プロゲステロン産生 |
研究概要 |
遺伝子クラスターを形成しているGSTAファミリー(A1~A4)は、SF-1によってひき起こされるクロマチン構造の変化を介して発現誘導されることを明らかにしている。そこでこのSF-1依存的なクロマチン構造変化のメカニズムを解明するために、アフィニティークロマトグラフィーとMALDI-TOF MS/MS解析を用いてSF-1複合体の単離とその構成因子の同定を試みた。その結果、約20のSF-1複合体構成因子を同定し、その中からC/EBPβに着目し検討した。ヒト卵巣顆粒膜細胞由来KGN細胞を用いてC/EBPβの発現を検討するとcAMP刺激によって、C/EBPβの発現誘導が認められた。次にC/EBPβノックダウンによるステロイドホルモン産生に対する影響を検討したところ、cAMP刺激時のプロゲステロン産生が有為に減少した。このことからC/EBPβがプロゲステロン産生に必須な因子であるSTAR、CYP11A1およびHSD3B2のすべてまたはその一部の遺伝子発現に影響を及ぼしていることが推察された。そこでこれらの遺伝子発現に対する影響を検討したところ、すべての遺伝子がC/EBPβによって転写制御されていることが示唆された。さらにその転写調節メカニズムをChIP法、EMSA、ルシフェラーゼアッセイを用いて検討した結果、すべての遺伝子上流域にSF-1とC/EBPβの結合領域が近接して存在し、SF-1とC/EBPβが協調することで転写調節していることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
申請時に予定したように、SF-1依存性の高次クロマチン構造変換をひき起こす核内因子の同定を試みた。申請時にはshRNAを用いた解析を行う予定だったが、「研究が当初計画通りに進まない時の対応」で示した内容であるSF-1複合体構成因子の同定を並行して行ってきたところ、この同定に成功したことから、同定した因子の1つC/EBPβの機能解析を優先して行った。その結果C/EBPβによるプロゲステロン産生のメカニズムの解明につなげることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
C/EBPβによるプロゲステロン産生のメカニズムをより詳細に解明し、プロゲステロン産生低下が原因となりうる不妊症の治療法の開発につなげる。またSF-1依存的なクロマチン構造変化のメカニズムを解明するために、高次クロマチン構造の変化に重要なSF-1のドメインの同定とそのメカニズムの解明についても行う予定である。
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