研究課題
我々は、これまでにマウス尾静脈注(i.v.)したsiRNA・アテロコラーゲン複合体が、炎症性マクロファージ或いは癌細胞に特異的にデリバリーされ、RNA干渉を発動後、抗炎症効果や抗癌効果(=治療効果)を示すことを証明してきた。標的細胞に特異的なsiRNAデリバリー法の開発は、より副作用の少ない、より安全なsiRNA核酸医薬の実現において、必要不可欠である。この課題では、siRNA・アテロコラーゲン複合体が示す標的細胞特異性の分子メカニズムの解明を目的としている。平成24年度の検討で、炎症性マクロファージにおける同複合体の細胞への取り込みメカニズムの解明に予定どおり着手し、平成25年度も引き続き実験を行い、以下のような新しい成果を得た。すなわち、インターフェロンガンマを作用することで誘導した活性化マクロファージに特異発現するEndo180(CD280)をノックダウンするsiRNAとshRNAを個別に作成し、活性化マクロファージの細胞膜上の同CD280をほぼ完全に発現抑制することに成功した。このCD280の発現をノックダウンした活性化マクロファージに対して、siRNA・アテロコラーゲン複合体を添加しても、ほとんど細胞内に取り込まれないことが分かった(細胞内に取り込まれたsiRNAを抽出して、逆相HPLCで測定・定量する技術によって証明した)。この結果は、活性化マクロファージの細胞膜上に発現するCD280が、siRNA・アテロコラーゲン複合体の特異的な取り込みにとても重要である事を示唆している。CD280は、コラーゲン受容体としても知られるため、siRNA・アテロコラーゲン複合体は、まず、このCD280に結合した後、受容体のエンドサイト-シスによって、細胞内に導かれるのではないか、と考察される。また、同機構によって細胞内に入ったsiRNAによるRNAi効果も証明した。
2: おおむね順調に進展している
本年度の成果を自己評価すると、おおむね研究実施計画に記載した通り研究が進んだと思われる。すなわち、活性化マクロファージに特異発現するCD280をノックダウンするsiRNA・shRNAを使って、同CD280がsiRNA・アテロコラーゲン複合体の細胞内取り込みに、とても重要な役割を持つことが証明できた。次年度の癌細胞におけるCD280の機能解析に繋がる成果を得たと思われる。
活性化マクロファージにおけるCD280の発現とsiRNA・アテロコラーゲン複合体の取り込みへの役割について、論文にまとめる予定である。また、マウスin vivoにおいて、CD280をノックダウンする実験系を作り、マウス個体レベルにおけるCD280のsiRNA取り込みにおける役割解析を予定どおり進める予定である。
平成25年度内に掲載許可(アクセプト)となった論文について、出版社からの掲載料金の請求や支払いが平成26年度にずれ込んだため。当該論文の掲載料金として、予定どおり使用する。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件) 図書 (1件)
Journal of the American Society of Nephrology
巻: 24 ページ: 1627-1642
10.1681/ASN.2012030226
Biomaterials
巻: 34 ページ: 9036-9047
10.1016/j.biomaterials.2013.08.011