研究課題/領域番号 |
24590349
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
内村 健治 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任准教授 (20450835)
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研究分担者 |
門松 健治 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80204519)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 脳神経疾患 / 生体分子 / 酵素 / 糖鎖 |
研究概要 |
アルツハイマー病脳内では、その発症の物質的基盤となるアミロイドβタンパク(Aβ)の重合および細胞外における沈着が観察される。これらはアミロイド斑と呼ばれる。脳内のミクログリア細胞はその貪食作用によりアミロイド斑を除去する。アルツハイマー病の進行にともないこれらの貪食除去が減弱することが確認されている。しかしその理由は明らかになっていない。重合Aβと複合体を形成する細胞外分子ヘパラン硫酸糖鎖がその貪食を阻害すると考えられている。申請者らは脳内アミロイド斑に蓄積するヘパラン硫酸糖鎖を報告した(Hosono-Fukao et al AJP 2012)。本研究は、申請者が以前明らかにした細胞外スルファターゼSulf-2によりAβに結合するヘパラン硫酸糖鎖を分解し、ミクログリア細胞によるAβ貪食作用を促進させることを目的とする。活性型Sulf-2および不活性型Sulf-2をミクログリアで発現させるレンチウィルス発現システムを本年度構築した。Sulf-2の発現と同時に緑色蛍光タンパク質GFPを発現させるベクターを構築することにより、発現細胞を蛍光で標識することを可能にした。これらレンチウィルスをマウスミクログリア細胞株N9に感染させ培養した。フローサイトメーターを使用し、GFPを発現するN9細胞のみを分取し、培養することができた。蛍光標識イムノグロブリン分子を用いN9細胞の貪食能を測定した結果、活性型もしくは非活性型Sulf-2を発現させることで細胞自体の貪食能には影響を及ぼさないことが確認された。現在、蛍光標識合成Aβとヘパラン硫酸糖鎖との複合体に対する貪食作用を測定している。また、脳内アミロイド斑を呈するアルツハイマー病モデルマウス脳の凍結切片を作製し、Sulf-2発現N9細胞のex vivoにおける貪食作用の測定方法構築を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在までの達成度は当初の予定よりやや遅れている。その理由としては、力価の高いレンチウィルスの作製が予定より難航したことが挙げられる。しかし、最終的には力価の高いウィルスを得ることができた。また、発現細胞が安定して得られるシステムを構築出来たことは今後の研究が予定通り進捗すると期待される。これらin vitroの実験と並行してミクログリアで細胞特異的にSulf-2を発現するトランスジェニックマウスの作製を行っている。こちらの達成度は順調である。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に得られた結果を基にして、in vitro 実験を引き続き行う。アルツハイマー病モデルマウス、APP-Tgマウスの脳より抽出精製したヘパラン硫酸糖鎖と蛍光標識合成Aβの複合体に対するSulf-2発現N9の貪職能も測定する。また、脳内Aβ沈着を呈するAPP-Tgマウス脳の凍結切片を作製しスライドガラスに固定する。これを細胞培養ディッシュに沈めSulf-2を過剰発現させたN9を一定数播種する。N9細胞にAβ沈着を一定時間貪食させ、取り出した切片について切片に残っているAβ沈着を蛍光免疫染色により定量する。貪食率を計算しSulf-2を発現させないコントロールと比較する。以下のin vivo 実験に必要なマウスの交配を開始する。ミクログリアで細胞特異的にSulf-2を発現するマウスLyzs-Cre/CAG-flox-STOP-flox-Sulf2-Tgを作成する。Lyzs-Creマウスは市販のマウスを購入する。CAG-flox-STOP-flox-Sulf2-Tgマウスは既にファウンダーを作製しており順次交配をおこなう。の準備ができている。Lyzs-Cre/CAG-flox-STOP-flox-Sulf2-TgとAβ沈着を呈するAPP-Tgマウスを交配し,ミクログリアでSulf-2を発現しAβ沈着を呈するtriple Tgマウスを作製する。当該マウス脳内において、Sulf-2酵素タンパクが予想通り強発現しているかどうかの確認を申請者が作製した抗Sulf-2抗体を用いて実施する。脳免疫組織染色および脳抽出試料に対するウェスタンブロット法により確認する。従来沈着Aβと共局在し蓄積するヘパラン硫酸多硫酸化ドメインの検出が消失するか否か、ミクログリア細胞の貪食能が促進されるか否かを組織染色により明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
引き続き消耗品として蛍光免疫染色用の各種抗体、アミロイドβペプチド(、アミロイドβ測定用ELISAキット、レンチウィルス精製キットなどの試薬を購入する。本研究においてアルツハイマー病モデルマウスAPP-Tg,Sulf2コンディショナルトランスジェニックマウスCAG-flox-STOP-flox-Sulf2-Tgおよびミクログリア特異的Creリコンビナーゼ発現マウスLyzs-Creは重要となる。アルツハイマー病様病理変化、すなわち細胞外におけるAβの重合沈着が十分に認められる12ヶ月齢までマウスを加齢育成する必要がある。実験動物購入および動物系統の維持に費やす費用が必要となるので、実験動物の購入費、飼育費に当該研究費を使用する。マウスの管理および維持のため、非常勤実験補助員が一名必要となる。そのため人件費・謝金を計上する必要がある。
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