研究課題
昨年度まで質量分析器による高感度・高精度な解析システムの構築を進めてきた。メートル長モノリスカラムを用いることでより少ない試料でより多くの蛋白質の同定を可能とした。さらに、iTRAQラベリングを併用することでサンプル間の定量比較も可能となってきた。本年度は、この解析システムのさらなるアップグレードを目指し研究を進めてきた。これまで解析試料は細胞をそのまますりつぶしたwhole cell extract (WCE) を用いていたが、発現量が低く、ある特定の場所に局在するような蛋白質の同定が難しかった。そこで、細胞を幾つかに分画することでより同定効率を上げることを試みた。細胞を、膜・細胞質・核、という分画に分けてサンプルを調製して質量分析器による解析を行ったところ今まで同定が難しかった蛋白質の同定に成功した。WCEだけの解析に比べ分画したデータを総合した場合の方で同定数の向上が認められた。次に、線維芽細胞とそれから樹立したiPS細胞のサンプルを用いて分画試料のプロテオーム解析を行ったところ、それぞれの細胞種特異的に発現する蛋白質の同定に成功した。また、これらのプロテオームデータとマイクロアレイのデータを比較検討した。その結果、マイクロアレイのデータでは発現量に差は認められないがプロテオームのデータでは差が認められる遺伝子を見つけることができた。このことは、これまでのような遺伝子発現の解析では見つけることができなかった新規のマーカーの同定につながることが予測される。以上のことから、細胞内の蛋白質を同定・定量することにおいて世界でもトップレベルのシステムの構築に成功し、新規のマーカーの解析にも道が開いたと考えられる。
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J Neurosci Methods
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http://www.cira.kyoto-u.ac.jp/nakagawa/