研究課題
脳の海馬は学習と記憶の要となる領域であるが、この領域での神経回路とシナプスの形成機構や機能の発現機構は依然として不明な点が多い。海馬のCA3野では、歯状回顆粒細胞の苔状線維が錐体細胞の樹状突起と巨大シナプスを形成する。このシナプスのシナプス前部は伝達物質の放出部位を数多く有し、錐体細胞の樹状突起のスパインを包みこむ特徴的な構造を呈している。しかし、苔状線維がCA3野錐体細胞とシナプスを形成する機構、および記憶と学習に伴ったシナプスの可塑性の機構は充分には理解されていない。一方、ネクチンとアファディンは、上皮細胞の細胞間の接着装置として研究代表者らによって見いだされ、カドヘリン依存性のアドヘレンスジャンクションの形成に不可欠な機能を果している。研究代表者らは、海馬苔状線維の巨大シナプスのプンクタアドヘレンシアジャンクション (PAJ)に、ネクチンとアファディンがカドヘリンと共局在し、シナプスの形成と維持に機能していることをこれまでに明らかにしてきた。本年度は、海馬苔状線維巨大シナプスの走査電子顕微鏡画像の三次元再構築法による解析を行い、アファディンを欠損したマウスではPAJがほぼ消失し、前シナプスのアクティブゾーンと後シナプスのシナプス後肥厚部も断片化して小型化していること、また、放出可能プールのシナプス小胞の数も減少していることを明らかにした。培養海馬切片における苔状線維単位シナプス伝達の電気生理学的解析では、興奮性シナプス後電流の振幅が減少し、ペアパルス比率が増加していた。これらの結果から、アファディンは苔状線維巨大シナプスの構造形成とシナプス前性とシナプス後性の機能を制御していることが明らかになった(論文準備中)。さらに本研究の過程で、アファディンが大脳新皮質の層形成に重要な機能を果していること、ネクチン-1が嗅球において新しい接着装置を形成していることを明らかにした。
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