研究課題
基盤研究(C)
1. クロマチン免疫沈降(ChIP)によるElongin A(EloA)の標的遺伝子の解析胚様体でのレチノイン酸(RA)による発現誘導にEloAを必要とすることが確認されたNeurogenin1、Neurogenin2、Hoxa7等について、RA添加、非添加時の遺伝子上各部位におけるRNAポリメラーゼII(Pol II)の分布を調べた。その結果、EloA-/-型の胚様体ではRA添加の有無に関わらず何れの遺伝子上にもPol IIがほとんど検出されなかったが、EloA+/+型の胚様体においては、RA添加によりプロモーターならびにコーディング領域に結合したPol II(totalならびにSer5リン酸化型)の量が著増することが判明した。以上から、EloAはいくつかの遺伝子においてはPol IIのプロモーターへのリクルートメント促進あるいは転写開始複合体の安定性維持にも寄与していることが示唆された。2. EloA-/-マウス胎仔の神経系発生・分化異常の病理・病態学的解析EloA+/+型と-/-型胎仔間で細胞増殖性とアポトーシスについて比較検討したが、何れの脳神経節においても有意な差は認められなかった。次いで、E9.5~E10.5の胎仔を用いてホールマウントin situハイブリダイゼーションにより各種転写制御因子の発現について検討した結果、神経堤細胞のマーカーであるSox10の発現がEloA-/-胎仔の脳神経節と後根神経節において、また、感覚神経系の分化に必要なNeurogenin1ならびにNeuroD1の発現が第V神経節等で著明に低下していることが判明した。一方、プラコード細胞のマーカーであるPax8や交感神経系の分化に必要なMash1の発現には有意な変化が認められなかった。以上より、EloAは神経堤細胞から感覚神経への分化の制御に重要な役割を果たしていることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
目標としていた(1)クロマチン免疫沈降(ChIP)によるElongin Aの標的遺伝子の解析と(2)Elongin A-/-マウス胎仔の神経系発生・分化異常の病理・病態学的解析をほぼ計画通りに実施し、Cell Reports誌に発表することができたため。
RNA-sequence、ChIP-sequence等の解析を海外共同研究者のJoan Conaway博士が在籍する米Stowers研究所のシークエンス部門に依頼して実施する。
RNA-sequence、ChIP-sequence等の解析に必要な遺伝子工学用試薬、細胞培養試薬、プラスティック器具ならびに抗体の購入やDNA合成、マウス飼育費等に充てる。
すべて 2012
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)
Cell Reports
巻: 2 ページ: 1129-1136
10.1016/j.celrep.2012.09.031