研究課題/領域番号 |
24590358
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 獨協医科大学 |
研究代表者 |
杉本 博之 獨協医科大学, 医学部, 教授 (00235897)
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研究分担者 |
堀端 康博 獨協医科大学, 医学部, 助教 (80392116)
佐藤 元康 獨協医科大学, 医学部, 助教 (20418891)
青山 智英子 獨協医科大学, 医学部, 助教 (90420778)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | Phosphatidylethanolamine / CTP:phosphoethanolamine / Cytidylyltransferase / 25-hydroxycholesterol / HMG-CoA reductase / YY1 / NF-Y |
研究概要 |
本研究の目的は細胞膜を構成する主な脂質PE合成の律速酵素CTP:ホスホエタノールアミン・シチジリルトランスフェラーゼ(ET)の活性調節機構に注目し、ETの活性制御機構を転写および翻訳後レベルで解明することである。コレステロール合成の律速酵素HMG-CoAレダクターゼの転写調節機構にも注目し、PEとコレステロールの合成がどのような機構により協調して細胞膜脂質組成の恒常性が維持されているのかも解明する。これまでに25-ヒドロキシコレステロール(25-OHC)がETの転写および酵素活性を抑制することを見出し報告した。ETプロモーターにはSterol regulatory element (SRE)を認めない。 今年度は、マウスETプロモーターのレポーター解析から、-57/-37領域に25-OHCにより転写抑制を受ける領域が確認された。-57/-37領域のGel-shift法から、本領域内に結合する転写因子を認め、Yeast one hybrid法から、本領域に結合する転写因子Yin Yang 1 (YY1)とNF-YCを得ることができた。 25-OHCとYY1およびNF-YCがETの転写制御にどのように関わるのかも解明する。YY1に対するsi-RNAで細胞を前処理し、25-OHC効果への影響を検討したところ、内因性YY1の低下で25-OHCの抑制効果が減弱した。NF-YCに対するsi-RNA処理では、25-OHCによる抑制が著明に現れた。NIH3T3細胞に高発現させたYY1に25-OHCの代謝産物25-OHC-サルフェイト(25-OHCS)(5microM)を添加すると、Gel-shift法でYY1の結合が抑制された。以上からYY1はETの転写を促進し、25-OHCの添加により25-OHCが25-OHCSに代謝されYY1の結合が抑制され、ETの転写が低下すると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細胞膜を構成する主な脂質には、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)およびコレステロールが知られており、それら脂質の細胞膜における組成はほぼ一定に保たれている。本研究の目的はPE合成の律速酵素CTP:ホスホエタノールアミン・シチジリルトランスフェラーゼ(ET)の活性調節機構に注目し、ETの活性制御機構を転写および翻訳後レベルで解明することである。同時にコレステロール合成の律速酵素HMG-CoAレダクターゼの活性調節機構にも注目し、PEとコレステロールの合成がどのような機構により協調して細胞膜脂質組成の恒常性が維持されているのか、その新たな調節機構を分子のレベルで見出す事である。 これまでの研究により、Yin Yang 1 (YY1)とNF-YがETのプロモーターに結合し25-OHC添加によるET転写抑制の機構に関わることが明らかになった。YY1もNF-YもET転写の促進性転写因子として作用していることがレポーター解析から確認された。25-OHC添加によりその促進作用が低下することも明らかになり、この機序として、25-OHCがYY1に直接作用するのではなく、25-OHCの3位の炭素に硫酸が結合した、25-OHC-サルファイト(25-OHC-S)に代謝された代謝産物により、YY1の結合が抑制され、ETの転写が抑制されることが推測されてきた。 これまでの結果から、ETの転写制御に関わる転写因子としてYY1が同定され、YY1の転写制御機構を調節する因子の候補として25-OHCの代謝産物25-OHC-Sを見出すことができたので、おおむね順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的はコレステロール合成の律速酵素HMG-CoAレダクターゼの活性調節機構にも注目し、PEとコレステロールの合成がどのような機構により協調して細胞膜脂質組成の恒常性が維持されているのか、その新たな調節機構を分子のレベルで見出す事である。これまでの研究から、これら酵素の転写調節を担う転写因子としてYY1を得ることができた。 YY1は大腸菌に高発現させるとcDNAから予測される分子量45kDaの位置に電気泳動で認められる。DNA結合領域だけを大腸菌に発現させたものはDNAに結合できるが、全長を大腸菌に発現させるとDNAに結合できない。ところが、NIH3T3など動物由来の細胞に高発現させると推測されるよりもかなり大きい位置60kDa付近に認められ、全長型でもDNAに結合する。動物細胞に発現させると翻訳後修飾を受けて分子量が大きくなり、DNAへの結合能を獲得するようになると考えられる。25-OHC-S存在下では、この機能が失われ、DNAに結合できなくなるが、これがどのような機構により行われるのか、YY1がどのような翻訳後修飾を受けるのか解明することから研究を進める。 マウスHMG-CoAレダクターゼの通常のプロモーター領域にはSREが存在しない。マウスHMG-CoAレダクターゼのレポーター解析から、-30/-10領域に25-OHCにより抑制性の転写制御を受ける領域の存在が示唆され、NF-Yの結合コンセンサスが認められた。Gel-shift法により-400前後の領域にはYY1の結合が認められた。このことはYY1とNF-YによりETの転写制御と同じような機構によりHMG-CoAレダクターゼも転写制御を受けていることが示唆される。今後はHMG-CoAレダクターゼの25-OHCによる転写抑制機構の解明を、YY1とNF-Yとの相互作用に注目して進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品の購入に利用する金額としては小額であるため、次年度に繰り越し、次年度予算とともに使用予定である。
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