研究課題
マスト細胞には血球系の細胞系列決定や分化に重要な複数の転写因子(GATA1、 GATA2、 Scl、 PU.1など)が発現しているが、個々の因子の役割は十分に解明されていない。本研究は、GATA1、 GATA2の条件付きノックアウト(CKO)マウスと、それらより樹立したマウス骨髄マスト細胞(BMMC)を用いて、マスト細胞分化におけるGATA1とGATA2の機能を明らかにすることを目的として行った。研究結果の概要は、以下のとおりである。GATA1CKOマウスの末梢組織マスト細胞の数および分布は、野生型マウスと同様であった。BMMCのマイクロアレイ解析では、GATA1欠失により炎症関連遺伝子群やマスト細胞トリプターゼ遺伝子群の発現が有意に低下していた。次に、野生型BMMCを用いたノックダウン実験を行ったところ、GATA1とGATA2の両方を同時にノックダウンしたときに、どちらか一方をノックダウンしたときよりも顕著なマスト細胞特異的遺伝子発現の低下が観察された。また、ChIP解析で、マスト細胞に特異性が高いKit、Ms4a2遺伝子の制御領域に、GATA1とGATA2がともに結合していた。GATA2のDNA結合ドメイン(CF)を誘導的に欠失するマウス(GATA2deltaCF)由来のBMMCsでは、多数のマスト細胞関連遺伝子の発現が著しく低下し、マスト細胞にほとんど発現していないCebpaの発現が増加し、マスト細胞の分化形質が失われていた。これらの結果から、GATA1とGATA2はマスト細胞特異的遺伝子の発現をともに正に制御していると考えられるが、Cebpaの発現抑制とマスト細胞分化形質の維持には、主にGATA2が機能していることが示唆された。
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