研究課題
ノックアウトマウスの解析より細胞周期進行におけるCdK1(cyclin-dependent kinase1)の重要性が再認識されているが、その制御機構は酵母と比較すると十分明らかになっていないのが現状である。申請者は酵母でcdk1制御を司るシグナル伝達系であるMitotic Exit Network(MEN)の哺乳類における意義を明らかにすることを目的として本研究を行った。酵母MENではRas様低分子Gタンパクであるtem1より発したシグナルがdbf2キナーゼによるcdc14ホスファターゼのリン酸化を誘導する。リン酸化cdc14はユビキチンリガーゼ複合体APC/Cの活性化やcdk抑制タンパクの誘導などを通してcdk1活性を抑制している。しかし哺乳類のdbf2相同キナーゼであるLATS1ではCDC14を含めホスファターゼが基質であるという報告が未だなく、またLATS1がどのようにAPC/C活性を制御しているかも不明であった。そこで申請者らはLATS1キナーゼにより生じたリン酸化ペプチドを質量分析によりスクリーニングしてホスファターゼを検索したところ、予想に反してCDC14は検出されず、Protein phosphatase 1C(PP1C)の制御サブユニットであるMYPT1 (myosin phosphatase-targeting subunit 1)が新規基質として同定された。さらにLATS1がMYPT1をリン酸化することで、MYPT1を介したPLK1(polo-like kinase1)活性制御に関与することも見出した。またLATS1がAPC/Cの構成分子の一つであるCDC26をリン酸化することでAPC/C活性を直接制御し得ることも明らかにした。これらの結果はMENの哺乳類と酵母との違いを示唆するもので、そのシグナル伝達系の詳細と個体レベルでの意義解明を進めていきたい。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件)
PLOS One
巻: 10 ページ: 1-22
10.1371/journal.pone.0118662. eCollection 2015.