研究課題/領域番号 |
24590363
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 藤田保健衛生大学 |
研究代表者 |
土田 邦博 藤田保健衛生大学, 総合医科学研究所, 教授 (30281091)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 幹細胞 / 筋サテライト細胞 / 間葉系前駆細胞 / 再生医療 / 異所性骨化 / 線維化 |
研究概要 |
近年、幹細胞の再生医療への応用の実現化が期待されている。骨格筋に関しては、筋芽細胞やiPS細胞由来の筋細胞の治療応用が想定される。しかし、骨格筋が生体重量の約40%を占め全身に存在する臓器であることから、再生医療は未だ実現しておらず、今後の進展が期待される状況である。さて、骨格筋には、筋細胞を産み出す筋サテライト細胞が約50年前に電顕観察から発見され解析されてきた。近年、我々を含めた幾つかの研究グループの解析から、骨格筋内には筋サテライト細胞の他にも種々の幹細胞が存在し、筋分化、骨分化、脂肪分化に寄与するという興味深い知見が示されている。マウスやヒトの骨格筋試料から、筋サテライト細胞と、新たに見い出した間葉系前駆細胞を明確に分離して採取する手法を開発した。試験管内では、筋サテライト細胞は、筋芽細胞分化、骨芽細胞分化を示すが、生体内では、筋細胞の産生と再生に主に寄与すると考えられる結果を得た。一方、新規の間葉系前駆細胞は、試験管内では、脂肪細胞、繊維芽細胞、骨芽細胞、軟骨様細胞への多分化能を示した。移植実験においては、条件によって脂肪細胞を産み出す細胞として働いたり、異所性骨化や線維化に寄与するという知見が得られた。異所脂肪沈着、異所性骨形成は筋疾患で見られる病態であり、それを担う細胞を明らかにした成果である。間葉系前駆細胞に発現する分子を解析しその特徴を詳しく調べた。骨芽細胞分化に関しては、miR-146-5p, miR424といった従来骨分化への関与が知られていなかったmiRNAが分化過程で発現上昇し、骨芽分化に関与する事を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ヒトのサンプルを用いて、筋内に存在する幹細胞複数種を純化するという本研究部門でしか行なえない手法を開発したことは評価できると考える。ヒト試料を用いて、脂肪分化、骨分化、軟骨分化といった複数の中胚葉系譜の細胞に分化可能な細胞を同定したのも大きな成果である。筋内にカルシウムが沈着したり骨化する難病として進行性骨化性線維異形成症 (FOP)や筋ジストロフィーが知られている。骨化に寄与する細胞を同定できたことは病態の解明と共に治療法開発にもつながる成果と言えよう。
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今後の研究の推進方策 |
筋分化素過程、間葉系前駆細胞の骨芽細胞分化素過程で発現が増加する小分子RNAは、それぞれの細胞分化や増殖に関与する可能性が高い。平成24年度の成果を踏まえて、分化調節因子の候補となる小分子RNAとその阻害実験を行ない、分化の調節効果を検討する。分化過程で変化するシグナル伝達経路に着目し、Akt/PTEN経路、Smad経路、レチノイン酸 (RA) 経路を中心に筋再生、肥大、骨分化の経路解析を行なう。筋組織と骨組織、膵臓等の内分泌組織との臓器間相互作用を解析する。全体の研究期間で、骨格筋に存在する幹細胞システムの多分化能の理解を深め、筋難病で筋量低下、筋内脂肪化、骨化、線維化といった病態が生じる機構を明らかにし、根本的な治療の素地の構築を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究遂行に必要な消耗品、成果発表や研究打合わせ旅費、動物維持の為の実験補助の人件費等に使用する事を計画している。
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