研究実績の概要 |
幹細胞と呼ばれる細胞には、ES細胞・iPS細胞のように胚由来や人工的に作製した多能性幹細胞と、体内に元々備わっている体性幹細胞に二分される。骨格筋組織は、生体の40%もの重量を占める臓器であり中胚葉由来と考えられている。遺伝性の筋疾患のみならず、種々の病態で筋萎縮が見られる。骨格筋の再生医療は緒についたばかりであり、幹細胞システムの包括的な理解が重要である。 約50年前に電子顕微鏡観察から発見された、筋基底膜と細胞膜の間に存在する筋衛星細胞が筋分化に寄与する細胞として解析が推進されてきた。一方、私たちは、筋分化への寄与をほとんど観察されないが、筋の脂肪化、間質の結合織増加、TGF-βシグナルの活性化による繊維化、そして異所性骨化に寄与する細胞(間葉系前駆・幹細胞)の同定に成功している。倫理審査承認を経て、使用しているヒトの筋標本を出発点として、培養条件を詳細に検討し、筋衛星細胞と間葉系幹細胞を分取する手法を開発した。また、近年、22塩基程度の小分子核酸 (miRNA)や長鎖非翻訳RNA (lnc RNA)が筋分化を含めた分化素過程に関与する事が解析されている。本研究で、筋肥大経路で作用するmiRNAを同定しAkt/mTOR, PTEN系へのクロストーク等の詳細な分子機構を解明した。筋分化調節転写因子の上流にこれまで未同定であった長鎖非翻訳RNAを発見し、質量分析装置を駆使してその会合分子を同定に成功した。筋分化や筋萎縮・老化との関連について研究を推進させた。 これらの、一連の研究は、研究代表者の研究室を主体に進行させている研究成果であり、筋萎縮疾患や老化による筋萎縮への応用展開が期待される。
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