本研究では、まず、幹細胞(アクセプター細胞)の分化環境を提供する細胞(ドナー細胞)を作製し、次に、ドナー細胞と三次元的に共培養を行ったアクセプター細胞の分化・形態の制御を試み、最終的にドナー細胞を除去しアクセプター細胞由来の高機能細胞凝集体を純化することを目標にした。これまでに、アクセプター細胞の前処理(分化により蛍光を発する、薬剤耐性遺伝子の導入)やドナー細胞の選択・加工(種々の因子の強制発現)、さらには、共培養によるアクセプター細胞の分化誘導も確認できたが、昨年度にドナー細胞の完全除去が困難であることが判明した。そこで、平成26年度はマウスiPS細胞やEC細胞にドナー細胞が供給する分化誘導因子の遺伝子を直接導入し、テトラサイクリンによる発現誘導系を利用してアクセプター細胞の集合体をドナー細胞なしに分化誘導させた。 1.Syntaxin1はiPS/ES細胞が神経系へ分化するのに伴って発現し、神経機能や形態に影響を与える。そこで、まずiPS細胞にこの発現プラスミド、もしくはノックダウンコンストラクトを導入し、導入遺伝子を発現させずにSFEBq法でその細胞集合体の神経系への分化を促した。その後、テトラサイクリン添加量の調節でsyntaxin1の発現を人工的に調節したところ、グリア細胞への分化を抑え、ニューロンへの分化を促進する条件が抽出できた。 2.平成25年度に作製したP19CL6-MLC-GFPは、ドナー細胞が産生するエピモルフィンにより心筋細胞への分化が加速されることが分かった。そこで、シグナルペプチドを付加して効率的に細胞外へ呈示するように加工したエピモルフィン遺伝子をアデノウイルスによってP19CL6-MLC-GFPの集合体に導入した。その結果、このアクセプター細胞は高効率で(通常のDMSOによる効率の20倍)心筋に分化することが分かった。
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