研究課題/領域番号 |
24590366
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
野口 正人 久留米大学, 医学部, 教授 (10124611)
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研究分担者 |
佐藤 秀明 久留米大学, 医学部, 准教授 (60271996)
杉島 正一 久留米大学, 医学部, 准教授 (30379292)
東元 祐一郎 久留米大学, 医学部, 准教授 (40352124)
原田 二朗 久留米大学, 医学部, 講師 (10373094)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 生理的ヘム分解 / ヘムオキシゲナーゼ / シトクロムP450還元酵素 / タンパク質間の電子伝達 / 酸素分子の活性化 / 一酸化炭素 / ビリベルジン / ビリルビン |
研究概要 |
ヘムオキシゲナーゼ(HO)は,本来ヘム蛋白質ではないが,NADPH-シトクロムP450還元酵素(CPR)からの電子を利用して, 基質であるヘムが自触的に酸素分子を活性化し,3段階の酸素添加反応によってヘムを開環し,ビリベルジン・鉄・COを生成する。本研究では, CPRからHOへの電子の受け渡し機構およびその電子が基質であるヘムに到達するHO内部の径路を明らかにすることを目的とする。 1.我々は表面プラズモン共鳴法を用いた結合実験とコンピュ-タ-モデリングから,CPR/HO-1複合体の推定構造を得た。この構造およびHO活性測定実験から, HO-1のK149,K153およびR185がCPRとの相互作用に重要であると結論した。しかしながら最近CPRにはドメイン単位での構造的揺らぎがあることが知られ、最も開いた状態の完全ヒンジ短縮型CPR(△TGEE)から、より開きの程度が低い一連の部分ヒンジ短縮型CPRはそれぞれ特有のopen conformation をとる可能性がある。よってこれらのヒンジ短縮型CPRとヘム-HO複合体を結晶化し構造を決定する。 2. 最近、我々はHOのNMR緩和分散測定を行い、ヘム結合時にヘム結合部位から遠く離れたタンパク質表面領域の7個のアミノ酸残基(V73, L77, Y78, F79, L83, H84及びR85)に構造の揺らぎが観られた。これらの変異体のHO活性をCPRを用いて調べたところ、F79Aに著しい活性の低下が見られた。HOの電子伝達系が部分的に損なわれたために、F79Aの活性低下がもたらされたと推察されたので、この変異体と新たに作製したF79Lを詳細に解析する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.最も開いた状態のヒンジ短縮型CPR(△TGEE)は, ヘム-HO結合体と強固な複合体を形成した。この複合体については、既に結晶が得られ、現在その構造を解析しているところである。 2.野生型HOとF79AおよびF79L変異体のsingle turnover解析ならびに酵素活性測定の結果を比較すると、F79Aのみで野生型よりもヘム分解活性が低下し、その原因が電子伝達系の異常にあると考えられた。また結晶構造解析から、F79A変異が、CPRとの相互作用に重要であるR185の配向に影響を与えていることが分かった。一方、F79L変異体では、R185への影響はほとんど見られなかった。そこで、表面プラズモン共鳴法解析によってCPRと変異体の相互作用を調べたところ、どちらの変異体も野生型と同等のCPRとの親和性を示した。これらの結果から、R185はCPRとの相互作用だけでなく、CPRからの電子の伝達にも関与している可能性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
1.一連のヒンジ短縮型CPRについて、次のような生化学的検討を行う。①ゲル濾過:野生型CPR (wCPR, closed formに大きく傾いている) とヘム-HO結合体は分離して溶出されるが, CPR(△TGEE)はヘム-HOとの複合体として溶出される(強く結合している)。一連のヒンジ短縮型CPRがゲル濾過上HOとどのような挙動をとるのかを調べる。②表面プラズモン共鳴法:アポHOはwCPRともCPR(△TGEE)とも会合しない(CPRとの相互作用にはヘム-HO結合体の立体構造が必須)。一連のヒンジ短縮型CPRについてヘム-HO結合体との解離定数(Kd)を測定する。③EDCによる架橋実験:CPR(△TGEE)はHOと堅く架橋される。他のヒンジ短縮型CPRについても同様な検討をする。 2. NMRによる緩和分散によって, ヘム結合部位から遠く離れたタンパク質表面領域の7個のアミノ酸残基(V73, L77, Y78, F79, L83, H84及びR85)に構造の揺らぎが観られた。これらの変異体のHO活性をCPRを用いて調べたところ, F79Aに加えて、Y78A、 L83A及びR85Aの変異体で著しい活性の低下が見られた。ベルドヘム段階で反応がほぼ停止する変異体も含まれていた。この結果は, HO蛋白表面に位置するアミノ酸残基が CPRとの結合及び電子伝達に深く関与していることを窺わせる。よって, この4つの変異体について一連の生化学的解析を行い、CPRからの電子の受け取り口であるHO側の残基を特定する。さらにその残基がFMNから電子を受け取るのかあるいはFADからなのかを, FMN欠失CPRおよびFAD欠失CPRを用いて決定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の残金約20万円と今年度の配分金120万円を合わせても、140万円である。この金額は通常の実験試薬の購入及び学会研究打ち合わせ等で充分消費できるので、昨年と同様に日常的な研究費として使用する予定である。
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