研究実績の概要 |
ヘムオキシゲナーゼ(HO)はNADPH-シトクロムP450還元酵素(CPR)からの還元力を用いて、ヘムをビリベルジン、鉄、一酸化炭素へと分解する。CPRにはopen型とclose型の二種類のconformationがあり、CPRのヒンジ領域の一部を切除するとopen型が安定化される(Hamdane D et al., J. Biol. Chem., 284, 11374-84 (2009))。我々は、open型を安定化した変異CPR(ΔTGEE)が、ヘム-HO-1複合体に安定に結合すること、また、ΔTGEE-ヘム-HO-1複合体の結晶構造を発表した(Sugishima M et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 111, 2524-9 (2014))。本研究では、ΔTGEE-ヘム-HO-1複合体の結晶構造が、溶液中でも同様の構造であることをSAGA-LSでのX線小角散乱実験により確認した。さらに、電子顕微鏡および架橋実験による解析から、野生型CPRもΔTGEEと同様にopen型でヘム-HO-1複合体と結合することを確認した。また、close型をジスルフィド結合により安定化させた変異CPR(Xia C et al., J. Biol. Chem. 286, 16246-60 (2011))は、沈降平衡法による超遠心分析からヘム-HO-1複合体とほとんど相互作用しないことが示唆された。これらの結果から、野生型CPR-ヘム-HO-1複合体の立体構造はΔTGEE-ヘム-HO-1複合体の結晶構造とよく似ており、open型CPRのみがヘム-HO-1複合体と相互作用することが示唆された。よってHOによるヘム分解過程には、open型とclosed型のCPRとHOが交互に相互作用することにより、ヘム分解に必要とされる7電子が受け渡されると考えられた。
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