研究課題/領域番号 |
24590368
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 独立行政法人国立長寿医療研究センター |
研究代表者 |
杉本 昌隆 独立行政法人国立長寿医療研究センター, その他部局等, その他 (50426491)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 細胞老化 / HuR / ARF / 翻訳 |
研究概要 |
HuRノックダウン(kd)細胞におけるARF mRNAの量を調べたところ、ARFタンパク質の発現が亢進しているにも関わらmRNA量に差は認めれられなかった。しかしながらHuR-kd細胞では、ポリソーム画分におけるARF mRNAの量は増加ることから、HuRはARF mRNAの翻訳を制御することが示唆された。 HuRは様々なmRNAに直接結合して転写後調節を行うことが知られている。そこでRIP法により、ARF mRNAとHuRの結合について調べたところ、両者が細胞内で相互作用することが明らかになった。しかしARF mRNAにはこれまでHuRが結合すると考えられているAU-rich elementは見られず、既知のHuRの標的RNAと比べARF mRNAの結合は極めて弱いことから、これら分子の相互作用は直接ではなく第三の分子を介している可能性も考えられる。またHuRはARF mRNAの5’非翻訳領域(UTR)と相互作用し、この領域を欠損したARF mRNAはHuRの影響を受けないことから、HuRがARF mRNAに結合することが発現制御に重要であることが示唆された。さらに細胞内でのARF mRNA局在について調べたところ、通常ARF mRNAは核質内に多く存在するのに対し、HuR-kd細胞では核小体に多く局在することが明らかになった。また核小体へのARF mRNAの局在には5’UTRが必要であった。 次にARF mRNAの翻訳を正に制御する因子について調べたところ、核小体タンパク質NCLがHuRと拮抗する形でARF mRNAと結合することを見出した。NCLをkdした細胞ではHuR発現阻害によるARFの上昇が見られないことから、NCLはARFの翻訳に不可欠であり、HuRは核小体でARF mRNAとNCLが結合するのを阻害することによりARFの発現を負に制御することが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当該年度は、当初の計画を大幅に上回る成果を得られた。理由としては研究室に新たな人員が確保できたこと、海外との共同研究がスムーズに進んだことが挙げられる。また先に行う予定であった動物実験に関しても当該研究施設に新たな動物実験施設が完成し、開始を早めることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
H25年度は、これまでの研究成果をまとめるとともに引き続き以下の点について研究を継続して行う。 既に予定を早めて開始した動物実験を完了する。海外との共同研究により、HuRコンディショナルノックアウトマウスを入手した。このマウスと脂肪組織特異的CRE発現(ap2-CRE)マウスを交配し、脂肪組織特異的HuR ノックアウトマウスを作製した。脂肪組織の細胞老化は、生体のインスリン抵抗性を惹起させる原因になることが報告されている。我々の作製したマウスを解析し、生体におけるHuRと細胞老化の関与について、インスリン抵抗性をアウトプットとして評価する。 HuRはARFを介して細胞老化に伴う細胞増殖停止を制御するが、この他にも細胞老化表現型として近年注目を集めているSASP(Senescence-associated secretory phenotype)の発現制御を行うことがこれまでの研究により明らかになっている。計画書に記述したように、このメカニズムについて詳細な解析を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度は研究費を、細胞培養、分子生物学実験に必要な消耗品・試薬、また実験動物の維持や動物実験に必要な試薬等に使用する予定である。
|