研究課題
昨年度までに、HuRがARF癌抑制タンパク質の翻訳を抑制することにより細胞の分裂寿命を維持することを見出した。この制御が生体内でも同様に起こり得るかを検証するために、脂肪細胞特異的HuRノックアウトマウスの作製し、解析を行った。その結果、HuRをノックアウトした脂肪組織では早期からARFタンパク質の発現と脂肪細胞の老化が認められた。またこのマウスは野生型と比較して有意なインスリン抵抗性を示した。本年度は昨年度に引き続き、HuRによる細胞老化特異的分泌表現型(SASP:senescence-associated secretory phenotype)の制御機構について解析を行った。HuRノックダウン細胞では、SASPで見られる様々なサイトカイン遺伝子の発現が誘導された。これらサイトカイン遺伝子の発現は、通常のSASP同様にp53経路非依存的であった。またSASPの発現には転写因子NF-kBが必要であることが報告されているが、HuRノックダウン細胞で見られるサイトカインの発現もNF-kBを介して行われることが明らかになった。さらに、通常の細胞老化で見られるSASPは、DNAダメージシグナルを介したNF-kBの活性化により誘導されるが、HuRノックダウン細胞では、一本鎖特異的なDNAダメージの蓄積が見受けられた。HuRノックダウン細胞はDNA二本鎖切断にはコントロール細胞と比較して特に感受性に差は見られないが、一本鎖切断に対してはより高い感受性を示した。従ってHuノックダウン細胞は、一本鎖DNA切断を修復する機構に異常が起こり、その結果DNAダメージシグナルが亢進しNF-kB の活性化を介してSASP様の表現型を示すことが示唆された。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Cell Reports
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