研究課題
細胞老化は、細胞分裂に伴う染色体末端のテロメアの短縮による分裂寿命に加えて、がん遺伝子の活性化・がん抑制遺伝子の不活性化、酸化ストレスなど、様々な刺激により誘導され、がん化の抑制、動脈硬化症など種々の老年性疾患や個体老化との関連が示唆されているが、その制御メカニズムについては不明な点が多く残されている。近年、老化した細胞から炎症性サイトカインを含む種々の液性因子が分泌されるSASPという現象が見出され、周囲の微小環境に影響を及ぼすことから、老年性疾患や個体老化と密接に関係していると考えられるようになってきた。一方、老化および代謝制御因子であるNAD+依存性ヒストン脱アセチル化酵素SIRT1もがん化・老年性疾患や生活習慣病の制御に重要な役割を果たしている。そこで本研究では、上記の点に着目して、SIRT1による細胞老化の制御メカニズムを明らかにすることを目的として研究を行った。本年度は、SIRT1が定常時およびDNA損傷に応答した細胞周期制御因子の発現を制御していることを見出した。低分子干渉RNAを用いてSIRT1発現抑制ヒト繊維芽細胞株(MRC-5-shSIRT1、MRC-5/TERT-shSIRT1およびBJ/TERT-shSIRT1)において、通常培養条件下において細胞周期制御因子の発現が低下していた。また、X線照射によるDNA損傷を介した細胞老化を誘導した場合も、この細胞周期制御因子の発現誘導が減弱した。細胞周期制御因子とSASPの関係を検討するために、細胞周期制御因子をノックダウンしたところ、SASP因子のIL-6およびIL-8の発現誘導が著しく増大した。これらの結果より、SIRT1は細胞周期制御因子の発現誘導を介して、SASP因子の発現を抑制していることが示唆された。
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PLOS ONE
巻: 10 ページ: e0116480
10.1371/journal.pone.0116480
Mol Cell
巻: 55 ページ: 73-84
10.1016/j.molcel.2014.05.003