研究課題
メサンギウム細胞は腎糸球体内にあって糸球体係蹄を束ね、糸球体血流量を調節する機能を有する。一方で、糖尿病性腎症やIgA腎症などでは過剰なメサンギウム基質合成を示し、病態形成に深く関わる。本申請研究では、転写因子GATA3が腎メサンギウム細胞に特異的に発現し、その維持に深くかかわることを初めて明らかにし報告した。Gata3ノックアウトマウスは胎生致死となるため、低レベルのGata3を発現するGata3低発現マウスを新規に樹立した。Gata3低発現マウスは著しい腎萎縮と口蓋形成不全を呈し、新生児期に致死となったため、成体期に至らなかった。そこで、Gata3の遺伝子座を含む662kbの染色体DNA領域を有するYAC(酵母人工染色体)DNAを用いてトランスジェニックマウスを作成し、Gata3低発現マウスの腎障害と口蓋形成不全による致死性をレスキューすることを試みた。このレスキューマウス(G3YR)は成体にいたるまで生存し、腎臓も野生型コントロールマウスと同程度まで発育したが、糸球体では著しいメサンギウム増殖性糸球体腎炎が観られた。その後の解析から、662kbのGata3 YACでは腎メサンギウム細胞に充分なGata3遺伝子発現を誘導できないことが解った。G3YRマウスのメサンギウム細胞ではPDGF(血小板由来成長因子)受容体の遺伝子発現が低下しており、PDGFシグナルを介したメサンギウム細胞維持機構の破綻が、糸球体腎炎の発症に関わっていると考えられた。Gata3遺伝子に変異を持つ遺伝病(HDR症候群)家系では、メサンギウム増殖性糸球体腎炎を呈することが明らかとなってきた。本研究で樹立したGata3低発現マウスは、HDR症候群にみられる腎臓病を忠実に反映したモデル動物であり、今後の病態メカニズム解明と治療法開発に有用なツールとなると考えている。
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